2月22日公開!超新作映画『サムライマラソン』感想文 〜黒船がパワハラという概念を日本に運んでくれてたら彼らは走らずに済んだ!〜

日本のマラソンの発祥と言われている安政遠足。

みんなで水筒やお弁当。金額上限を決めたおやつをリュックに入れて出かけるあの楽しい遠足が元なの?とふとよぎりましたが、遠足(えんそく)ではなく遠足(とおあし)と読むそうです。

黒船来航により幕府が揺らぐ中、安中藩主・板倉勝明は藩士を鍛えるために遠足を呼びかける。それぞれが様々な思いを抱える中でマラソンは始まったものの裏では大きな陰謀が渦巻いていた…。

『超高速!参勤交代』の原作・脚本で知られる土橋章宏による史実に基づいた5編の短編で構成されているのが原作小説『幕末まらそん侍』

最後の章でそれまで何事も起きていないかのように見せていた安政遠足に張り巡らされた伏線を一気に回収しカタルシスを生んだ原作小説をアクション映画としてスリリングになるようアレンジしたことでバイオレンスと豪快さが増し、さらには強力主要キャストはもちろんのこと門脇麦や阿部純子などが脇を固めたことにより、まるで頑丈な石垣で出来た屈強な城のような作品。ずしん!

佐々木蔵之介主演の『超高速!参覲交代』のような骨太な黒澤明的時代劇とはまた違った「誰もが楽しめてコミカルで軽めの時代劇」を連想したまま鑑賞してしまうと、 面食らってしまうほどのシリアスさはあるものの、東京オリンピックを前にマラソンの原点を描くという素敵な試み。

時代劇離れしている観客層にとっても「行って帰ってくる」というマッドマックス的ストーリーのシンプルさもあるため飲み込みやすい。

この時代劇に対してライトな層を巻き込みやすいという点は、作品の時代設定が【幕末】であり庶民派武士達が主人公というのも大きなポイント。

時代の分岐点に携わった坂本龍馬や新撰組、西郷隆盛などの志士が主人公の幕末時代劇ももちろん良いのだけれど、本作は安中藩にいる藩士たちが主人公。しかも、非常に庶民に近い人物達がマラソンに挑戦する。平和ボケをしてすっかり体の鈍った武士達が走るもんだから、すぐ息は切らすわゲロ吐くわでみっともないったらありゃしない。

武士と聞くと、忠誠心や武士道やら信念やらとアツいイメージが浮かびがちだが、本作の主人公たちは刀で世を渡る時代は終焉を迎え平和ボケしてしまったサムライたちなわけです。

戦はないと言えど、殿の命令は絶対であるがゆえにどんなに怠け切った身体であっても鞭打って走らなくてはいけない。この状況がなんとも言えない滑稽さを放っていて微笑ましい!

そんな親しみやすい設定の本作だが、このご時世に観たからなのか、映画を観ながらふと思ってしまったたわいもないことを綴らせていただきます。

太平の時代にマラソンをさせるというこの突飛なスパルタは現代でいうパワハラ。

しかし、当時。自分が仕える主君の命令は絶対で異論など唱えることなど論外。

マラソンの発祥を描きつつも、絶賛公開中の『七つの会議』で扱われている日本の会社組織の根本的な問題。その淵源的なことも本作は同時に描いているように見えて興味深い!

(本作の監督はイギリス人の監督であり、日本の社会状況の変化を我々と同じように肌で感じ映像化したとは考えにくい。封建的な制度が未だ根強かった幕府崩壊前を描いたことではからずもこの手の問題が浮き彫りになったんだと思う)

ペリーが日本に最初に持ち込んだのが酒や銃ではなく「コンプライアンス」という概念だったら、みんな走らずに済んだのかな…?とか現代と結びつけて考えながら鑑賞してしまった。(そもそもコンプライアンスやパワハラってこの言葉が当時からあった訳ではないと思うのでただの願望)

仕える君主の命令は絶対だし、逸脱した者は切腹というガチガチルールがあるからこそ時代劇は面白くなるわけで、本作もその理不尽さがコミカルに繋がっているのだが、それは同時に今の世の中を風刺することの役割も果たせているのかもしれない。

だらだら言って結局なんなんだよ。って感じだと思いますが、つまり時代劇は古いことを騙っているように見えて新しいことを描けるという最強のファンタジー的要素のある素晴らしいジャンルなのです!

だから、こういう視点を持ったいろんな時代劇が作られてブームになるといいな〜

 

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