新作映画『グリード 炎の宿敵』を観るその前に……

ぼくの顔の下にいたら滝修行ができるよ!ってくらい眼球失禁してしまった『クリード チャンプを継ぐ男』に続くロッキーシリーズ第2弾『クリード 炎の宿敵』

本作はロッキーの4作目にあたる『ロッキー 炎の友情』の続編でもあり、ロッキーシリーズのスピンオ……あああっ!!!もう!!!この説明聞いただけでいいかげんにしろ!と漫才だったらオチをつけたくなる訳のわからなさ。

本来なら、予習せずとにかく観に行きましょう!と言いたいところですが………

過去作全部観てください。

こんな乱暴な発言はしたくない!けれど、ちゃんと理由があるから話だけでも聞いて。

普通、こういう長寿シリーズSTARWARSとかアメコミ映画とかなんでも最新作が公開された時って【予備知識として】過去作を観てくださいってことはあると思うんです。

もちろん本作『炎の宿敵』もそういう側面として、過去作観てほしいってこともありますが…そうじゃなくて!!!そうじゃなくてさ!!!

ロッキーシリーズっていくら駄作と言われいる過去作もあるんですけど、それらを一切無駄にせず(黒歴史だから過去の作品のあれ無かったことにしますっていうハリウッドで最近流行りの事実修正もせず!)1作1作をうやむやにせず下から大事に積み上げていってる稀有な映画シリーズなんです!

その積み上げの一番上にいるのが今回の最新作『炎の宿敵』であって、まるで今までの過去作品はこの作品のためにあったのか…って思わせるほどパワフル!!

それでいて、奇をてらった変な展開は絶対にしない。王道から外れることはせずかつ新鮮味も持たせているという奇跡オブ奇跡!キング・オブ・奇跡 優勝!な映画なんですよ!

じゃあ、どんな積み上げしてる〜?って。

クリードシリーズでロッキーの親友アポロの息子クリードがロッキーの元に「ボクシングを教えてくれ!」と懇願しに来てロッキーは結局受け入れる訳ですけど、引退したロッキーがクリードを受け入れるのってロッキー1作目だけ観ててもわからない。

2作目で再戦して倒したアポロ。3ではもはや友情を超えた危ない関係なんじゃないか?って思わせるくらいの絆を育み、4ではその親友アポロをロッキーが死なせてしまう。

5の冒頭でロッキーは原点であるフィラデルフィアに戻ったからのちのシリーズがあるし、あそこで弟子育成と子育てに失敗したからこそクリードを育てようと思えたわけですよね。クリードにロッキーを「おじ」と呼ばせてるのは、弟子という側面だけなく距離を置かれてしまっている息子=親類という側面を足して2で割っているからです。

路上の殴り合いが映画のクライマックスとなりボクシング映画なのに、まさかのリングにはあがらず終えてしまう珍作5作目。このままじゃ終わらせれない。6作目のロッキー・ザ・ファイナルでラストリングに上がらせることで、ロッキーはリングの上でちゃんと幕引きができて、それがあるからクリードに繋げれるんですよ!5の次がクリードは……無理っしょ!

1〜4でアポロとの度を超えた友情を、5で弟子を育てる理由を、6でロッキーをボクサーとして幕引きさせてるからクリードが出来る!

1作1作をバラで観るんじゃなくて、点と点を繋げて線で観れるんです!このシリーズ!こんなず太い線で全部観れる映画……ないよ!

過去作を観て【予備知識】を積み上げるのではなく【感情】が積み上がっていって、最新作で爆発させる感覚。

なんなのよ、これ。凄すぎるだろ。

どうしてこんな奇跡が出来るかと言えばそれは明快!

シルヴェスター・スタローンだから。

 

人生どん底で俳優として芽が出ないスタローンが3日で書き上げた脚本がロッキーの第1作目。この時からロッキーはスタローンの写し絵であり2、3と作品で描かれるロッキーはスタローンの人生と重なります。

だからシリーズ最初っから最後まで通じてブレがない。

もうこういうの全部ひっくるめて、過去作全部観ることをオススメしております!

伝われ!この想い!!!

新作映画感想文『ゲヘナ』〜日本人監督・片桐裕司氏デビュー作!思い出せば出すほど嫌な気分になる呪い〜

1年くらい前にSNS上で話題になっていたハリウッドでキャラクター造形を手がける日本人・片桐裕司氏の初監督作品『ゲヘナ』の話題を目にした時、アップされていた細くて不気味なジジイの写真を観て、うぉおお観てぇ!!!と。そして、やっと日本公開!ありがとうございます!

上映中、前に座っていた感情移入しすぎおじさんが本編中に「おーう」「あーう」と唸ってくれてたおかげで怖すぎずに済みました。そちらもありがとうございます!いや…ありがとうなのか?むしろ最近の上映マナーを考えると怒るべき対象なのかもしれませんが、そんなことは遠くへほっぽりましょう!

ゲヘナ!

サイパンにリゾート施設作る気満々の奴らが下見をしに島を散策していると、洞窟を発見!

入り口で長老が祈ってて「祟りじゃ〜」とか言ってる金田一耕助バリのフラグからして絶対入っちゃいけないんだけど、会社で出世を狙っている土地開発会社の女社員ポリーナはなんとしてでもこのプロジェクトを進めたいから藤岡弘並みの勇気で洞窟へ突進!すると、そこには無数の死体とやせ細ったジジイが…!

ここからの展開は奇想天外なので内緒!

 

前半はサイパンの美しすぎる景色を引きまくりの俯瞰ショットなどを駆使しながら表現し、洞窟以降のシーンは徹底的に暗くて狭い世界を映すことで観客もいや〜な閉塞感を体感する仕掛けに。

いっこくも早くこんなところから出たい!と思わせつつもあえて洞窟内の図面を難解にし、登場人物達が今どの辺にいるのかを全く感じさせない迷宮演出も秀逸です。

先人たちが犯したこと。その上で生きている自分達の国民としての【侵略による罪悪感】迷い込んだ人物たちが抱える【過去の罪悪感】が重なり合っていき観客の持つ潜在的な恐怖を引き出しながらも、この呪いの行く末には単なる「死」が苦しみなのではないというキリスト教圏では考えづらい死生観がよく出ていて、日本人監督ならではのアイデンティティーが炸裂していると感じます。

鑑賞後、いろんな伏線を思い起こすと…嫌だなぁ…絶対に嫌だ。と尾を引くつくりに…。

映画終盤では、あまりの酷な呪いに感情移入しすぎおじさんも唸るのやめてました。たぶん今頃、あのおじさんは帰りの電車でゲヘナを思い出しながら、一人で「おーう」「あーう」って言ってると思う。それが一番怖いね。