日本ホラー映画『残穢 住んではいけない部屋』感想 〜映画と原作どっちが怖いのか???〜

「おわかりいただけただろうか」

「もう1度ご覧いただこう」

「その部屋でかつて自殺した女の霊がこのビデオに映りこんだとでも…言うのだろうか」

暗くて低い独特なナレーションが一般人が撮影し「映ってしまった」心霊ビデオを紹介する『呪いのビデオ』シリーズを小学生の時に観て怖くて怖くてたまらなかった!!!

一度、祖母の家で本シリーズを観終わりデッキから取り出そうとした時、バツン!とブラウン管が真っ暗になり、そこに映った恐怖におののく僕の顔。そこにおおいかぶさるように『呪いのビデオ』に出てきた【電車の窓に映りこむ男性】が見えた気がしてパニクった思い出がある!(これマジ)

このシリーズの演出、構成。そしてあのナレーションを担当していたのが中村義洋監督で、世間的には映像化が難しいと言われていた伊坂幸太郎の小説を映画化した監督として有名だが、元は『呪いのビデオ』出身である中村監督が2016年1月に小野不由美原作『残穢』を映画化!

主人公のホラー小説家の元へ送られてきた「部屋で不可解な音がする」という女性の手紙から物語は始まり、そのアパートに住む他の住人、建物が建つ前を大正時代まで遡りながら調査していくというドキュメンタリースタイル。これはまさに先述した『呪いのビデオ』と近い構成で胸が踊りました!

貞子や伽倻子といったのちにアイコン化されていくような特定の幽霊が人々を呪うのではなくて、その「土地」に憑いた人間の怨念が穢れとなり連鎖し、そこに触れた人間が不幸な目に遭うという、絶対に逃げようのない災いが新しくて怖かった映画版『残穢』

 

では「部屋に置いておきたくない」とまで言われている原作小説は怖いの???

ということで、読んでみました!この原作vs映画の戦いを結論付けるなら…

 

小説版の圧勝!!!

※映画版もかなり怖いのは大前提です!!!

 

というのも、本作の主人公は【私】

この【私】の完全な主観で書いたように思えるのが小説版です。【私】を客観視している描写がない。

「あれ?これ…まるで作者の小野不由美さん本人が書いてるみたい……」

そう思っていると、実在するホラー作家の平山夢明さんが登場したり、清水崇監督『呪怨』をホラー作品として引用してきたりするんです。その上、手紙を送ってきた投稿者の名前を「仮に久保さんとしておく」っていう断りをいちいち入れてくるんです。

そんなことされているうちに…え…?これ…実話?

という疑問が湧いてくる。(実際、どこまでが実話なのかはわかりません)

さらに小野不由美の書き方が冷静でそこにもやられます。

小説内で怪奇現象を紹介しながらも「しかし、これは気のせいだったということもある。なぜなら〜云々」という合理主義を炸裂させてくる。

 

 

これって物語にブレーキをかけてしまうんじゃないか?

たしかに、映像作品であればそうなるかもしれません。心霊現象をはっきりと具体的に映した後に「気のせいだったということも」とか言われるとバカバカしくなる。

でも、小説は作者が書いた文章からこっち側の読者が勝手に想像するから「気のせい」が成立するし、むしろその「気のせい」は誰もが1度は経験したことのある現象。ゆえに物語の恐怖が身近になっていきます。

小説版はそんな風に心霊現象と偶然の現象という正反対の間をぐわんぐわん行き来させられて、なんとそのまま宙ぶらりんで終わる!

それによって「え?どっち????」とモヤモヤが残る気持ち悪い後味を残す。

実話なの?と疑ってる、こちらからするとこの【解明されない呪い】の方がリアリティがある。だって、世の中の不思議なことは解明されていないから不思議として今もあるから。

そもそもこういったテーマを扱う原作を映画化するというのはなかなかの至難の技です!

映画版は、小説という利点を生かした恐怖を生み出した原作を『呪いのビデオ』スタイルを用いて映画化したというのは妙案で、特に過去に遡った時の写真や新聞記事を通して現実味をもたせた恐怖をお客さんに与えることが出来ています。

けど【私】役は竹内結子!もう仕方ないんだけど、この時点でフィクションが成立しまいますよね。

もう思い切って小説版を事実としちゃって「小説を元に映画化した」という前提でこの映画を作ればまた味が違ったかもしれません!

映画版は視覚的にインパクトのあ?恐ろしい場面たくさんありますがしっかりフィクション。

しかし、小説版はパンチ力は無いものの、現実と虚構のラインがとてもグレーで恐ろしい。

 

ただし!どっちもめっちゃ怖いことに変わりは無いからどちらもめっちゃオススメです!

最初に綴った【電車の窓に映る男】体験のようなことは誰もがあるはず。そんな気のせいかも?という経験が『残穢』によって決定的な恐怖に変換されます……。

 

あ。

 

1つだけ。

 

一人暮らしの人は絶対、触れないように。

 

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