新作映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』感想文 〜殺人能力を体得したムツゴロウさんが愛を取り戻すための奮闘劇!〜

宇宙ステーションで進めていた遺伝子組換え実験のカプセルが地球に落下し、それを飲み込んでしまった3頭の獣が巨大化してシカゴの街を破壊する。

まるで小学生が考えたような(賛美の言葉です)おはなしを大真面目にお金、人、時間をかけて映画化するというハリウッドの一番良いところが存分につまった『ランペイジ 巨獣大乱闘』は朗らかな快作!

主人公のロック様ことドウェイン・ジョンソンは動物保護施設のおじさん。人間が嫌いらしくエッチなお姉さんの誘いも断り、仕事もプライベートも動物とずっとイチャついてる。もちろんロック様なので元特殊部隊という設定でめちゃくちゃ強くて人間相手なら武器いらず。

そんな人を殺せるムツゴロウさんはヘリから墜落しても平気だし、銃で撃たれても平気。巨獣とだって戦えるんだけど人間ていう提だから一応、ビビったり逃げたりはする。彼は密猟者に親を殺された色素欠如の真っ白なゴリラ・ジョージを我が子のように育て、今では手話で会話できるくらいのマイメン。2人のやりとりが仲睦まじく愛おしく思わずニヤけちゃいます……こういう場面は『猿の惑星』新三部作のシーザーを観ている感覚に近くて技術の進歩、職人の皆様に感謝。

そんなジョージがある日、空から降ってきたカプセルの煙を吸ってしまい巨大化凶暴化が止まらなくなってしまった!

かつての愛らしい表情はなくなってしまったジョーイを見つめるムツゴロウさん…。愛すべき人が変わり果てていく姿を見つめる切ない描写はクローネンバーグの『ザ・フライ』やゾンビ映画の「大切な人がゾンビ化していく悲しさ」 我が娘が悪魔に取り憑かれていく『エクソシスト』のそれらと同じ!

つまり、これは獣が巨獣になる話ではなく【獣化してしまった長年連れ添ったパートナーを愛せるのか?取り戻せるのか?】という愛の話だったのだ!!!

この映画が『愛、アムール』のハネケ監督だったらジョージはムツゴロウさんに首の骨をへし折られて即お陀仏だけど、本作はそうはいかない…。

1933年の一番最初の『キングコング』は文明に殺されてゆく悲劇を描き、このフォーマットは同ジャンルのあらゆる作品で繰り返されてきたわけだが、今回はその通例をランペイジらしく咀嚼した愉快なラストになっている。

 

また、この映画の主役はあくまで【巨獣たち】であるという点も気持ちが良い。冒頭で登場した3人のサブキャラは前半で活かせそうなフリもあったし後半で登場するかと思いきや、いつの間にかご退場。周囲で騒いでる刑事だの軍隊だの企業だのはあくまでサブストーリーで全く役に立ちません!

ロック様とジョージ。そして、そこにオオカミとワニが加わった巨獣4頭が話を進めるし終わらせる。人類の入る隙間など1ミリもない巨獣だけが主役の最高なモンスター映画!

そして……ラストはドウェイン・ジョンソンでしか成り立たせることのできないブチ上がりまくる展開が待っている!!!

果たして2人の愛は戻るのか!?頑張れ!ゴリラとムツゴロウ!

 

新作映画『孤狼の血』感想文 〜祝!続編決定!現代版にアップデートされた東映・新ヤクザ映画は勝ちました!(もはや制作側の気分です)〜

荒波をバックに東映の三角マークが出てきて(ヤクザ映画全盛期の当時のフィルムをそのまま転用してるからなおいい)「うわっ!ヤバ…!ラ・ラ・ランドが同じ手法でミュージカル映画の復興を謳った開幕のようにこれは東映ヤクザ映画のふ…」とか考えている間に豚のお尻からウンチが出てきて「うわっ!ヤバ…!これは普通の映画じゃないじゃん!え、竹野内豊さんあんなに暴力演技を嫌がってたのにハマりま…」とか考えている間に「うわっ!ヤバ…!MEGIMIさんエロすぎ!いいなぁ、おれも密室で…」と冒頭から矢継ぎ早にストレートパンチを連続3発食らってしまい脳がグワングワン揺れるが本作『孤狼の血』

東映が【ヤクザ映画の復興】を『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督に持ちかけるというロマンしかないキッカケから始まった本作は監督に「君たちの観ている邦画は生ぬるいんだよ!」と口の中に豚のウンチを詰め込まれている気分にさせられる大傑作となりました。

本作の公開は北野武監督『アウトレイジ』シリーズのヒットも一因であるだろうし、それを彷彿とさせる観客が多いのではなかろうか?

小さな因縁からどんどん暴力が肥大化していく振り子的なプロットや殺し方大喜利、怒鳴り合戦が楽しかったアウトレイジシリーズに対し『孤狼の血』は、原作者も意識したという東映ヤクザ映画の名作『県警対組織暴力』(深作欣二監督・笠原和夫脚本)を彷彿とさせる【警察・ヤクザ・ヤクザの三つ巴と癒着。そこから生まれる法を守る警察にとっての正義と悪の境界線】が主軸になっている。さらに、そこにミステリー要素が加わったことで、単なるオマージュだらけの焼き直しではなく、現代版にアップデートされた東映新ヤクザ映画が誕生したのだ!

その上で侮ってはならないのが、役者陣の迫力の【顔問題】である。

仁義なき〜の撮影前夜、深作監督はキャストと朝まで飲み明かし全員目がバキバキ状態で撮影をしたという逸話は有名だが、この手の映画はそれくらい顔が重要!俳優がテレビに多く出演しタレント化している昨今において血と暴力の世界に生きる男のギラギラした顔を際立たせるのは一苦労いる。

「なんじゃい、こらぁあああ!!!」と吠えていた役者さんの演技を観ても脳裏にはバラエティ番組で愛想を振る舞いている画が浮かんでしまうだけで台無し。

しかし、本作はそんな余計な考えは浮かばないくらいみなさんの顔力と演技の迫力が凄まじい!

 

主要キャストはもちろんバイプレーヤー達のどう見ても極道の世界で生きているであろう顔の生々しさ。この顔面力によって作品のリアリティ、説得力がグーーーンとあがるあがる!

 

役者陣で言うならば、もちろん役所広司さん演じる大上の暴れっぷりも最高なのだが、この映画で最もアガり、男泣きさせらるのは大上の違法捜査に翻弄されまくる松坂桃李くん演じる日岡刑事!

捜査方法は問わずホシをあげるためなら何でもする大上の下につく日岡は広島大学出身で警察としての倫理観は大上とは真逆。

この真逆の価値観を持った2人の対比は県対組でいう菅原文太・梅宮辰夫になるわけだが、この映画では後半でまったく違う展開を見せてくれる。

日岡がある決断を下すとき、それまでの伏線や感情が一気に回収され男泣きさせられる。さらにラストカットはこの展開があるからこそできた何ともヒロイックな終わり方にしびれまくる。

そんな日岡と超羨ましい関係に展開する阿部純子さんもすんげぇイイ…男の想うきゃわいい女性像が全部つまっててたまりませんでした。

 

まぁ……こんなこと言いつつも復興失敗!ってオチもあるわけですよね…志はよかったけど…みたいなさ……

 

結局、今の日本ではウケ悪かったみたいな……

 

時代間違えたかな…みたいな…

 

だけどぉ!!!

ヘッヘーーーン!!!

早くも続編制作決定だって〜〜〜!

ウェーーーーーーイ!ざまぁ!!!(もはや製作側の気分です)

 

脚本・池上純哉さんによる原作の再構築、容赦ない痛い暴力描写を連発する白石監督の攻めの姿勢が完全に功を奏しました!

勝ちました!!!最高のニュースです!!!

また彼らに会えると思うと胸が高鳴ります。

新作韓国映画『犯罪都市』感想文 〜韓国版ハルク!片手で犯罪者をなぎ倒す痛快娯楽作ここに誕生!〜

「おまえを倒すには片手で十分だ」

死ぬまでに一度は言ってみたいと男の子なら誰しもが思うであろうこの台詞を体現する男。それがマ・ドンソクだ!

冒頭から片手(しかも平手打ち)で犯罪者をばったんばったんなぎ倒していく主人公刑事!そもそも韓国映画の平均点はべらぼうに高いわけですが、お国の歴史的背景から「頼りにならない刑事」が描かれがち。そんな中で、こんなに強くてチャーミングでコミカルで、気持ち良い刑事は同国の映画でも観たことない!

この映画はとにかくマ刑事最強映画でその辺の凡人と比べると考え方からして違う。

例えば、刃物を持った犯人を追い詰めた時に証拠品を入れる袋を取り出し「ほら、これに入れろ」と投げかける。つまり、マ刑事にとってこの勝負はすでに見えている。いくら刃物を振り回そうが結末はわかっている。だから、面倒な争いはとばしてさっさと終わりにしようと。

これは本当に強い男だからこそできる漢の振る舞い!

余裕があるって、男にはいついかなるときも大事なのだと!

彼は人間の皮をまとったハルクです、まじで最強。

そんなマ刑事の前に立ちはだかるのがチャン・チェン

可愛い名前と裏腹にたしかに怖いですよ、強いですよ、凶悪ですよ。残忍。ほんとに嫌な感じ。

けどね、だれもがわかるんですよ。

「おれたちのマ刑事の方が上だ!!!」と。コイツやられちゃうって。ドンマイって。

だから、開始10分でもう先が読めちゃう気分なのです。

はい、勝ち〜!なんだよ!!!つまんねーな!!!

……と思いきや

容赦ない方法でヤクザ抗争をかき乱していくチャン兄ちゃんと周囲を取り巻く環境にマ刑事は翻弄されていき全く先が読めない……‼︎

かといって、物語に余計なツイストはかかっていない。【追う追われる】のシンプルさ!きゃぁ!

ストーリーテリングのブレーキとなるそれぞれの悲しい過去の回想だとか、目的だとか、正義ってなんなんですか!?みたいなもんは全く無く重々しいバイオレンスのはずなのに笑えるシーンの連続で最高。

2つのヤクザが衝突し壊滅し、その間を行き交う主人公という構図は黒澤明監督の名娯楽作『用心棒』をも彷彿とさせる貫禄っぷり。

映画監督として日の目を浴びてなかった監督を古くからの親友であったマ・ドンソクが引っ張り上げ、自ら企画したのが本作だそうで、韓国でのヒットにより続編やろうぜ〜ってなってるそうです。

最高だぜ、好きだよ。

余計な要素が全くないシンプルな面白さって本当の面白さだと思っている筆者にとって本作は、間違いなく今年1位。何度でも見直したくなるまじ面白映画でした。