新作映画『今夜、ロマンス劇場で』感想文 〜理想を追いかけ童貞を捨てれないオタク青年!背筋が凍る後半たたみかけ……〜

昔、シュワちゃんが映画の世界から現実世界に飛び出してきて大暴れするご機嫌な映画がありましたが、今回は『ローマの休日』のオードリー・ヘップバーンような出で立ちをした銀幕の世界の住人・お転婆姫こと綾瀬はるかが映画監督を目指す映画オタクの主人公・坂口健太郎くんの目の前に突然現れます。

憧れだった映画のヒロインが現れて、浮き足立ってた坂口くんでしたが「お前は今日から私の僕だ」とドSのお転婆姫に下僕扱いされ、職場の映画スタジオは爆発騒ぎになったり、警察に捕まったりとてんやわんや。

2人は共に日々を過ごすうちに距離が縮まりイイ感じ…。しかし、彼女には秘密がありました。

 

「人のぬくもりに触れた瞬間、消えてしまう」

 

触れると彼女は死んでしまいます。

好きな人に触れられないなんて想像しただけでも…これは辛い!

キスしたい………ダメ!

肩を抱きたい……ダメ!!

手をつなぎたい…ダメ!!!

勘弁してくれぇえええ!その辺にあるガールズバーの方がもう少し融通が効くよ!

しかし、お転婆姫は死を覚悟して「抱きしめて欲しい」と告げる……。

 

あれ…?もう結末まで行ってない?

そういう気持ちになりますね。ていうか予告編を観た時点で「もう全部わかっちゃったよ!」って気になる。

しかし…!

さすがに、そんなことにはなっていません。予告編で見せている場面の「その先」があるのです。

 

 

 

ということで、ここから先は完全にネタバレいたします。

 

 

 

 

「最後に抱きしめて欲しい」

とお転婆姫が主人公に告げ触れようとしますが……

「ダメだぁああああ!やっぱり触れないぃぃぃぃぃぃ…!消えちゃうのいやぁぁああああ!!!」

となんとまぁ!主人公はここで踏みとどまります。

 

「決めたんです。触れられなくてもいいから僕とずっと一緒にいてください…」

 

本田翼からの逆プロポーズも断り、一生涯触れることのできない理想の女性【お転婆姫】を選んだ主人公。

そして、月日は流れ……おそらく60年近く二人は共に暮らします。一度も触れ合わず…。

入院してしまった主人公・爺さんは最後、息を引き取る間際にはじめてお転婆姫に抱きしめられます。

息を引き取る主人公。消えていくお転婆姫…。

天に召された主人公はお転婆姫の故郷である映画の世界で生きています。

二人は映画の中で永遠に生き続けるのでした。

めでたし。めでたし。

 

これは何の話なのだろうか。

一見、キラキラした素敵なファンタジーに思えるかもしれないが筆者にはそう思えなかった。

これは「理想に取り憑かれたオタクが童貞を捨てれない人生を描いた物語」

主人公は「大人」になれない。

あの時あそこで彼女を抱きしめ、ケジメをつければ彼は大人になれた。妻を迎え入れ子供を作り家族を作り、ごく普通の生活が送れたであろう。その選択はせず「存在しない女性」を身近に置いておくことを優先したのだ。

まるで、創作物やアイドルに夢中になりすぎて、童貞を捨てそびれてしまったオタクを見ているようだ。

「大人になれない」登場人物の映画は多々あるものの筆者が戦慄してしまうのは、本作が完全に【真っ当な美談】として描かれていて、それに鼻をすすりながら涙を流す観客がいることである。

60年近く主人公は普通の女性と付き合いもせずに触れない女性と生きてきた。

どう考えてもサイコパスだ。

たまっていく欲望を他のところでとんでもない別の方法で発散しているに違いない!

そうでなきゃ、あんな穏やかな表情はできないよね!おじいさん!

いじってるように見えてしまうが、この映画の青年像は現代の日本における「大人になれない」男を的確に描いているし、筆者もその中の1人であるような気がしたからこそ、この映画の後半の畳み掛けに戦慄を覚えた。

実生活をほったらかしにして、好きなものにどっぷり浸ったその先には何が待っているか……

ああ、ドキドキ。怖いですね。

 

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