新作映画『犬猿』感想文 〜全兄妹・全姉妹に贈る賛歌!日本アカデミー賞助演女優賞はニッチェの江上さんに決まりです!〜

本作をマジで楽しみたい人は画面を閉じてください!

 

本編前の予告編。

 

美男子高校生と美女子高校生が恋に落ちる甘酸っぱい青春ラブストーリー。

しかし、この恋は叶わない。なぜなら彼はもう1つの世界であるパラレルワールドからやってきた存在であり、こちらの現実世界ではすでに死んでいるから。

少女は走る!

走る!

走る…!

この想い、届け……!

『○の名は』を彷彿とさせるコンセプトに加えて既視感しかないありきたりな邦画のプロット。

予告編の最後には明らかにエキストラであろう女性が「泣きました!最高です!ああ。どうしよう…考えただけで涙が出てきました……」って。

「嗚呼、またこういう映画やるんだ…」とボヤいた瞬間、画面がブツんっ…!

え?

と思ってたら、なんとこれはフェイクのトレイラー。演出の一部だった!

完全にイジってる!!!笑

この時点で吉田恵輔監督に拍手喝采だし、このフリが効いてる分、作品内で起こる【美化されていない人間の生々しさ】が際立つ。

冒頭で「これからこういうことはしませんよ!」と高らかに宣言してくれているのだ!なんと気持ち良いサプライズスタートか…!しびれる。

 

本作はある兄弟と姉妹を描くヒューマンドラマ。

それぞれ見た目も中身も正反対である兄と弟、姉と妹の間には複雑な想いがあり一筋縄ではいかない関係性。

自分にないものを相手が持っているからこそ生まれる嫉妬や憎しみ…それらが「犬猿」の関係を構築させている。

ここまで年齢を重ねれば劇的に内面変化することはないわけだし、両者が折り合いをつけるしかない。つかなければ疎遠になればいいのだけれど、彼らは血が繋がっている兄弟と姉妹なのだからそうはいかない。

そんながんじがらめな関係が徐々にエスカレートしていく…。

「家族」と聞くとアットホームなあたたかいイメージのみが湧くかと言えばそうではないだろう。あらゆる関係性が複雑に絡み合った大きなコミュニティである「家族」は言ってしまえば面倒。「家族」であるがゆえに関わりたくもないことに巻き込まれることは大いにある。

本作は【決して理解できない肉親といかに生きていくか】というのが根本テーマ。

監督は前作『ヒメアノ〜ル』で「絶対に理解できず相容れない相手との共存」をゴールに置いて、両者の一瞬のシンクロと決別を描いたが、本作はその一歩先に到達している。

兄、弟と姉、妹の両者の激突が加熱していった先に「告白」「理解」「赦し」が待っているが、そこで幕を下ろさないのが本作のミソ!

理解しあった上で人間の本質は変化するのか?共生していけるのか?という問いかけをぶん投げてくれる。

ラストシーンは愛も憎しみも入り混じった不思議な手触りを観客に体感させてくれる。

この言葉にできない感覚こそが「家族」という不思議な関係性を表していないだろうか。

いいことも嫌なこともあるけど、それが兄妹じゃん!家族じゃん!っていう。

そう。これは全兄妹、全姉妹に贈る映画という表現を使った賛歌なのです。

そんなテーマ性の中でひときわ目立つのが、お笑いコンビ・ニッチェの江上さん!

会場は大爆笑で、その時必ず画面には江上さんがいる。

筆者も劇場で爆笑させられたのは久しぶりで感動いたしました。

しかも、ただのコミカルだけではなく、疲弊感と哀愁もプンプンに漂わせて泣かせてもくれる…。

お笑い的なボケではなく、お芝居で笑かして、お芝居で泣かせてくれる。最高です!

ちょっと!日本映画の賞レースさんたちよ…!絶対、江上さんに何かを授与しなくちゃいけませんよ!

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