新作映画『LOGAN/ローガン』感想文 〜大傑作!X-MEN史上最小スケール!アル中おじさん、ボケ老人、超寡黙少女のロードムービー!〜

2000年からスタートしたアメコミ原作の映画『X-MEN』シリーズ

えっくすめん。

こんなこと言ったら身も蓋もないが、声に出すのをためらっちゃうくらい、その名称はカッコイイ!と言えたものではない。

「アメコミ映画って何観たある?」と聞かれたら言うのが恥ずかしい。声が小ちゃくなっちゃう。

「え…え……えっくすめん」

X-MENはアメコミ映画近代史の先駆を切り拓いていると言っても過言じゃないくらい偉大なのに、どうしても声を大にして言えない!

もちろんアメコミなんて「すーぱーまん」だの「すぱいだーまん」だの「きゃぷてんあめりか」だのと何かとダサいんだけど、最近流行りのマーベル映画はそのクオリティとセンスによって何とかカッコイイルックを世に提供してきてくれたし、そのおかげでアメコミ映画がここまで市民権を得て、今では女の子もきゃー!カッコイイ〜!楽しい〜!と楽しめるコンテンツに成り上がった。

そんなアメコミ黄金期の礎を築いてくれたパイオニアは紛れもなくこの【えっくすめん】なんだけれども、なんだかノレない。

こんなのアメコミ映画を揶揄する一番の文句だが「コスプレ集団が暴れまわってる」という印象しか受けなかった。

さらに、人種差別や無理解、偏見といった人類史反省のメタファー的テーマも混入してきて、話はズーンと重くなり、3作目の『ファイナル・ディシジョン』ではとんでもない事になってしまった。そこからもウルヴァリンのスピンオフや冷戦という時代背景にフィクションを放り込んだ『ファースト・ジェネレーション』という傑作はありながらも、なんとも煮え切らない。

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配給会社が別である『アベンジャーズ』を中心としたマーベル・シネマティック・ユニバースがイケイケどんどんな勢いの中で20世紀FOX配給であるこの『X-MEN』シリーズは何だかヨタヨタ歩き。たまに新作が出て大丈夫か〜?と思いつつ鑑賞すると、可もなく不可もなくみたいな作品でなんとも熱がこみ上げない…

そんな中、17年間本シリーズの主役・ウルヴァリン(ローガン)を演じてきたヒュー・ジャックマンが本シリーズ卒業の作品『ローガン』が日本にやってきた!

 

 

かつて、世にいたミュータントの子供達を教育し、守る学園のハゲ校長だったプロフェッサーXも今ではヨレヨレのボケ老人。世話してくれているローガンに対して、おまえ誰だ!飯だ!トイレだ!とわめき散らし、かつての賢人みたいな雰囲気はどこいったのかとこっちはガッカリしてしまう。「君には失望したよ」というローガンに向けたセリフがあるが、それはこっちのセリフである。

そんなじじいを荒野のでけぇドラム缶に軟禁(暴走しちゃう能力を封じ込めるためです)しながら、しがないドライバーとしてせっせとお金を貯めるローガンもかつてあった自己治癒力は低下し、足を引きずりながら酒ばっかり飲むアル中おじさん。

かつての栄光を失ったグダグダの2人の元にローガンと同じ能力をもった超寡黙少女ローラがやってくる。

どうやら実験施設から抜け出し、絶滅したとされているミュータントたちが住む遠い楽園【エデン】に行こうとしているらしい。彼女を追ってくる悪の組織!(仮面ライダーがショッカーから逃げ出したと思ってくれればいいです)

「ほら!わしが言ってた新しいミュータントじゃよぉ!本当じゃったろ!わしの話は!」とわめくボケ老人を無視し、ローガンはローラを置いて逃げようとするが、ショッカー軍団にちょっと待ちなよ兄ちゃんと止められてしまう。

どんどん追い込まれるローラ。

「ローガンよ。あの子を助けるのじゃ〜」と指示してくるチャールズ。またもや無視するローガン。

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悪党の雑魚どもが家の中でコーンフレークを食べるローラの後ろにゆっくりと近づいていく。雑魚どもの手にはマシンガン……

ここでローラが暴れまくると思いきや、カメラは建物の引きショット。しーーーーん…と沈黙が続いたかと思いきや!!!

ずどどどっどどどどん!!!ウギャーーーーーーー!!!

激しい銃撃音と悲鳴が響きわたる。(ここの音だけで見せる演出に唸ります!)

扉が開くとそこにはローラが。ゆっくりと歩く彼女は何かを持っている…。

ん…?ん…?なに…??

生首!!!

転がすローラ。

ローガン「マジかよ…」

そこからのローラ無双!雑魚どもを爪でなぎ倒す!!

R指定、万歳!!!

『キック・アス』のヒットガールを一瞬彷彿とさせるが、POPな音楽は一切流れずひたすら悲鳴!悲鳴!斬撃音!

ローラの叫び。それは怒りと憎しみと殺しの本能を感じさせる魂の悲鳴!

超かわいい!!!

一瞬、危うくなったローラを助けたのは、もちろんウルヴァリンことローガン!!!

共に敵を切り裂き、なぎ倒すローガン!まるで、自分と同じ本能を感じ取り、共鳴したかのよう!

 

イェッス!イェッス!イェェェッス!!!Hooooooooooooo!!!

待ってたぜ!ローガン!!!

 

マジで映画館で叫んでしまった。熱狂した。前の席に誰もいなくてよかった!!!

車にローラを乗せ、その場を逃げ出すローガン。

 

チャールズ「その子は君にそっくりだ」

 

最高だーーーーーーーーーっ!!!!!!!

 

今までのX-MENはこの1作のためだけにあったんだ!!!

 

ここからアル中男、ボケ老人、超寡黙少女3人のロードムービーがスタートする。存在さえ危ういミュータントの楽園【エデン】を目指して。

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監督は過去作を観る限り、全然信用できなかったジェームズマン・ゴールド!疑ってごめんなさい。(でも、考えてみれば同監督作品であるウルヴァリンのスピンオフ『ウルヴァリン SAMURAI』は割と好きでした)

ジェーマン(監督の省略名)とウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンのマンマン同士は仲良く本作の企画を練った。

 

ジャックマン「おれの引退作は今までのX-MENと違った小さい映画にしたいんだよね!」

ジェーマン 「じゃあさ、じゃあさ、西部劇の『シェーン』が俺大好きだから、そんなんやろうよ!」

 

と大変盛り上がったそうだ。やはり作家というのは雇われ仕事で指示を受けたものを生むのではなく、本当にやりたいこと描きたい事をやる方がイキイキし、結果を出すようだ。

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本編を観ればわかるが『シェーン』のなど西部劇からの影響は如実だ。列車を使ったカーチェイスやクライマックスのある展開、ラストなど。荒野をひたすら旅する設定自体が画的に西部劇である。他にもイーストウッドの『許されざる者』リュック・ベッソン『レオン』近年の名作『マッドマックス 怒りのデスロード』も彷彿とさせる。

筆者としては時代劇のDNAを感じた。

かつて、黒澤明や勝新太郎は美しさを優先する歌舞伎のような時代劇に風穴を開けた。

「人を斬る」という行為はもっと恐ろしいものなんだと。だから、椿三十郎も座頭市も実はあんまり刀を抜かない。というか、もう人を斬りたくないという想いさえ感じる。しかし、自分は斬る事しかできない。その葛藤と矛盾が哀愁を生み出していたし、ここぞって時に刀を抜き敵を斬るというのは演出としても功を奏した。

本作でのローガンもそれに当てはまる。これまでのシリーズで何人もぶった斬ってきた事実がある分「人を殺すのは辛い。怖い」という苦悩は十分伝わってくる。

冒頭で、自分の車の部品を盗み出そうとしたギャングに立ち向かうローガンが描かれるが、最初からぶった斬ったりはしない。リンチされそうになりようやく怒って人を斬る。かつて若くてギンギンだった時とはもう違うのだから、それも痛々しい。

そんな状態だからこそ、後半でローラのために吠えながら雑魚どもを斬りまくる場面に我々はとてつもないカタルシスを感じるし、ローガンの全力が伝わってくる。

「どんなに正しい事をしても人殺しの烙印が押される」という『シェーン』の引用もあった通り、ローガンは罪を重ねてきた自分の人生のケジメの付け方を模索している。死に場所を探しているのだ。どう死ぬか。誰のために死ぬか…。

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また、本作は過去作を観ていなくても楽しめるのも嬉しいところ。もちろん全部観ていた方がチャールズ、ローガンの全盛期からの衰えがわかったりするからより深まるものの、今から9作品近くも観ろというのは酷だし、しかも、えっくすめんだし……。

「これ知ってる〜?あれのあれの引用だよ〜??」なんていうオタクが喜ぶような仕掛けはありつつも、わからないからって楽しめないっていう意地悪な事にはなってない。そもそも原作を大幅に改変し、良いところだけ残し、ジェーマンとジャックマンのマンマンコンビがやりたいことをぶち込んでいるの作りなので、事前知識は必要ではない。キモいナレーションやテロップこそ使われていないものの、チャールズとローガンのやりとりの中で情勢や設定を読み取れるのも楽しさなので、初見でも全然イケる!

残念なのは、本作の一番強い敵が最近やったターミネーターを彷彿とさせるところがあって、新鮮味に欠けたところ。でも、考えてみれば演出の意図としてはアリなのかも。

 

とにもかくにも、間違いなくX-MENシリーズの最高傑作がここに誕生した!

 

これでやっと堂々と声を大にして言える。

 

 

「おすすめのアメコミ映画ある?」

 

「ローガン!」

 

「ローガン…って?」

 

「X-MENのローガン!」

 

「え。え…えっくすめん?」

 

「そう!!!X-MEN!!!イェイ!!最高!!!X-MEN最高!!!」

 

 

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