新作映画『空(カラ)の味』感想文 〜我々に大事なことを問いかけてくれる 摂食障害の女子高生を描いた力作〜

【あらすじと解説】(映画.comより引用)

摂食障害に悩む女子高生が、ある女性との交流を通して解放されていく姿を描いたドラマ。女子高生の聡子は優しい家族や仲良しの友人たちに囲まれて何不自由ない毎日を送っていたが、いつしか自分が摂食障害に陥っていることに気づく。理由もわからないまま不安を募らせる聡子は、家族や友人との関係もぎくしゃくするようになり追い詰められていく。そんなある日、聡子は街で出会った危うげな女性マキと親しくなるが……。日本大学芸術学部の卒業制作「還るばしょ」で注目された塚田万理奈がメガホンをとり、「第10回田辺・弁慶映画祭」でグランプリをはじめ4部門を受賞。同映画祭で受賞した新人監督3人にスポットを当てた特集上映「田辺・弁慶映画祭セレクション2017」で劇場公開。

 

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主人公の女子高生はどこにでもいるような平凡な少女。一般的平均的な家族がいて、仲の良い友達もいるが、どこか「空」気のような存在感。

家で父と「学校どうだ?」「うん」「そうか、頑張れよ」という当たり障りのない会話を交わし、学校では友達と一緒に歩いていても、楽しい会話で先に前に行かれてしまう。

周りからイジメに遭ってる訳でもない。嫌われている訳でもない。

主人公はこの世界に埋もれている。いや、「埋もれている」というほど窮屈なものでもない。そこに「ただ漂っている」というのが正確かもしれない。

本人もそんな自分のスタンスが心地よかったりしているが、同時に苦しい。

そんな彼女は摂食障害を抱えていた。部活の顧問の先生のことが好きでダイエットをしたのがきっかけだろう。

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ちょっとした思いつきで始めたダイエットは結果的に悪魔との契約となり、止まることを知らない。次第には食っては吐き出しの繰り返しとなってしまう。

本作は上映時間125分という尺だが、クライマックスに至るまで彼女の苦しみが永遠と描かれる。

誰か彼女を救ってくれ!と観客は切望するが、先述した通り【漂うだけ】の彼女に救いの手は差し伸べられる訳がない。それがわかっているからより辛い。

途中、妹の異常を察知した兄の提案で「彼女の苦しみを解決する」家族会議が開かれる。

 

 

よし!偉い!兄貴!いいパスだ!

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憤る父。涙する母。

主人公「先に泣かないでよ。ずるいよ…」

せっかくの救いかと思いきや、逆効果となり事態は悪化。

観てるこっちも、今の彼女にかけた家族の言葉は違うとわかっていながらも「じゃあ…どうすりゃいいんだ…?」ともどかしい。

その観客の想いを代弁してくれるかのように涙する兄に筆者も目頭がグッときた。

家族会議をきっかけに、親友の家に家出をする主人公。

この学校の友人達の会話も異常にリアルなのが演出の妙だ。どんな青春映画でも言わされてる感ビンビンの不自然な若者会話にイラっとくることが多い中で、本作の若者会話は見事。もしかしたらアドリブでやらせてるのかな?

この【無作為な若者会話】のおかげで、先述した【この世界にただ漂うだけ】の主人公がより強調される作りになっている。

友人の家に居候をし、環境を変えることで病気を克服しようとする主人公だが、そう上手くはいかない。いよいよ病院に通うことになり、そこで心に病を持ったマキという女性に出会うが……

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ここからはぜひ本編を鑑賞してもらいたいのだが、本作を観て「他人の足元に灯をともせば、自分の足元も明るくなるぜ」という意味合いの昔の偉い人が言った哲学を思い出した。

暗い夜道で、誰かの足元を照らせば、同時に自分の足元も明るくなって前に進める。

「1人で灯をともして前に進むこともできるじゃんか」と筆者は勝手に思っていたが、本作を見て自分の考えは間違っていると悟った。

同じように苦しみを抱える誰かと歩むことによって自分のペースで、時には楽しく会話をしながら、自分のゴールに向かうことができる。

周りは「走れ!走れ!社会に合わせて走れ!」と揶揄する中でも、隣に誰かがいるだけで、ゆっくりとしっかりと自分の足で歩むことができるのだ。

たとえ、途中でその人とはぐれたとしても灯火を頼りにまた会えるし、相手がいなくなっても心の支柱となっていく。

本作ラストに訪れる大胆な展開は、それまで物理的な現実世界だった日常を覆し、2人だけの世界を見せるという映画でしかできないマジカルな場面で必見だ。

本編を観ながら、観客として「主人公をどうすれば救えるんだ」と憤っていたが、そもそも「救う」という偉そうな考え方自体が間違っていた。

彼女に必要なのは「共感」だった。「共に歩く」ことだった。

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「摂食障害を描きたかったのではなく、誰にでもある痛みや苦しみを表現したかった」と舞台あいさつで語る若き女性監督の塚田万理奈。

映画のラストは未来に向かって歩む主人公を、登場人物の誰でもなく監督自身が後ろから鼓舞するようなそんな感覚を覚えた。

悩み苦しむ人間にそっと寄り添う監督の優しさが垣間見えた力作だった。

 

 

 

追記

お恥ずかしながら、筆者と監督は同じ1991年生まれです。

 

 

映画『淵に立つ』感想文 〜コップのフチ子をイメージしてたら痛い目に遭いました〜

淵(ふち)と聞くとコップのフチ子ちゃんを思い浮かべてしまうが、そんな可愛いことを連想して鑑賞した本作にボコボコにされました。6FAA48BA-90B5-428D-B9FE-FABDD8B62B6F-13607-00000F4837A31485

 

金属加工の小さな工場を営む父母、娘の平凡な一家に男(浅野忠信)が1人現れる。

どうやら父(古舘寛治)の旧友でかつ久々の再会。

 

父「痩せたな」

男「あそこにいたら、痩せますよ」

 

昔の友人であるはずの相手に習慣で身についてしまったという敬語をぶつけるおかしな距離感。

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その日から浅野はこの工場で働き、家の居候に。動揺する母(筒井真理子)だったが、寡黙で誠実なこの男に次第に惹かれていく。どうやら、この男は殺人の罪で長い間刑務所にいたらしくさらに犯行現場にはなんとまぁ、父がいたらしい。

男は父が共犯者であることを伏せ、何年も自分1人で刑を受けていた。何も語らない父だが、どうやらこの男に恩ととてつもない罪悪感を感じている。

 

「俺が捕まってる間にお前は女作って、娘もいて普通の暮らしをしやがって」

 

突然、ブチキレた後に「冗談だよ」と開き直る男に嫌な予感がする父。

その予感は最悪の形で現実と化す……。

 

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元々、家族の中で流れる不協和音が浅野忠信によってより乱れていくこの作品はタイトル通りとてつもなく不安定な気持ちにさせられるヤベェ一本だ。

 

隠れた色気をちょい出しする母・筒井真理子や語らなすぎる父・古舘寛治の愛はあるのに鈍感というか無神経さは絶妙。

そして、浅野忠信が不気味すぎる。

電気を付けたまま就寝した男を見つけ、母が気遣って電気を消す場面。

「うううううううああああああああっ!」

つって浅野が飛び起きる。

「ごめんなさい…。電気消えてると寝られないんです」

いやいや、怖すぎるし、ちょっと面白いじゃないか!

習い事をサボる娘を見つけて「行かなくていいんですか?お母さん悲しみますよ」

娘にまで敬語。

夜中まで自分が殺めた青年の遺族に手紙を書いたりと、あれ?こいついいヤツ?うまくいってなかった家族に現れた居候が潤滑油となって、家族を本当の家族にするちょっぴり不思議だけどホッとするコメディなのか!

そんな【少し変わったアプローチの逆寅さん】みたいな作品なんだと自分に言い聞かせてたら、事態はとんでもない方向に…。

後半のあるきっかけで男は居なくなるんだけど、その【不在】が際立たせる存在感が異常。家族の宿敵となっていく浅野が最初は物足りない家族にピタッとハマるピースとなり、皮肉な事に一時安定するが、とんでもない抜け方をする事でよりガタガタになる。

 

いないのに、いる。

 

この強烈な存在感が、観終わった我々の背後にもびたーっとくっつき回り、未だに離れずコップのフチ子ちゃんのように不安定なところに立たされている気分になる。

男はそんな状態の私たちの背中を押すような事はしない。見てる。じーっと見てる。

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本当に本当にお願いだから、ウチには来ないでほしい。

新作映画『スプリット』感想文 〜誰も観たがってない【ハゲ対ハゲ】の超人対決〜

「おい!シックス・センスのオチ言うなよ!」

M・ナイト・シャマラン監督の代表作『シックス・センス』のオチをバラされてキレる人、もしくはその光景にツッコミを入れる人間を何度も見てきました。

個人的な感覚だけど、作品の【オチ】に重点を置く映画はこの1999年『シックス・センス』のどんでん返し以降のように思えます。また「衝撃のラスト○○分を見逃すな!」「あなたはこの結末を予測できるか」といった宣伝文句も本作以降、急激に増加。

観客はどんでん返し映画を見るたびに「自分だけがこの結末を目撃した!」という優越感に浸ることができる。鑑賞後は未鑑賞の相手に「あそこがあれでさ〜」とニヤけながら自慢ができるし、同じ作品を観た相手になら一緒に「秘密」を共感できる。そんな現象を生み出したのも良くも悪くもM・ナイト・シャラマンの大きな功績と言えますよね。

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筆者も当時『シックス・センス』に衝撃を受けた1人。

もちろん当時は「オチがやばい」なんて宣伝はなく、ただのホラー映画だと思ったので衝撃のラストにひっくり返った。

ただし、世が思う【どんでん返し】とシャマラン作品はちょっと違います。では、どんな裏切りなのか…?

 

※以下、シャマラン作品の結末に軽く触れるので未見の方は逃げて!

 

 

 

 

簡単に言えば、どの作品もファンタジー自体を覆す事は絶対にしないんです。幽霊や宇宙人などの存在自体をどんでん返しのオチにはしない。

なぜ幽霊が見えるのか。なぜ無敵なにか。に対するアンサーはない。超越的な現象自体は存在し、そこじゃないところで裏切ってくるんですね。

1つ前の作品である『ヴィジット』だって不気味な老夫婦が最高だったんですけど、彼らの行動に秘密はない。なぜこういう行動を取るのか?というところに注目していると、うかつにも違うところからカウンターパンチを食らって「オチ読めなかった〜」となる訳です。

だから、見方によっては非常にチープで子供っぽく見えてしまうところではあるんですが、筆者がシャマランを憎めないのはそういう子供っぽいところがあるから!爆裂ロマンチストなんですよね!

 

 

で、今回の『スプリット』

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ジェームズ・マカヴォイは23の人格(実際に登場する人格は数名なので肩透かしではあるけど!)を持つ解離性同一性障害の男。ある日、3名の女子高生を誘拐し監禁。

【23の人格】vs【女子高生】というあがる宣伝なんですが、シャマランの悪いところが発揮されなんともキレもテンポも悪い展開が続くきます。

ここで対峙する主人公の女子高生。

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VSの構図だったはずが、彼女はマカヴォイと同じ過去に虐待のトラウマを抱えている事実が徐々にわかっていき…

この【トラウマ】を常にシャラマンは重要視します。心的外傷を抱え、それによって世間からはみ出す人物。さらに、そういった人間は本当は強いというメッセージを常に込める監督です。

 

 

※以下、完全なるネタバレになります。

 

先述した通り、もちろんマカヴォイの多重人格の症状は本物で、24人目となるビーストと呼ばれる人格も登場。(人格というよりも、本人の見た目やポテンシャルさえ変態させるモンスターな訳ですが…)

で、その上で何を言いたかったかというと

 

 

「この世に超人は存在する」

 

 

という事なのです。笑

 

それを証明する決定的なラストカット。

 

解離性同一性障害が高校生を監禁したというニュースが流れるとある店内。

客が噂します。

「そういえば、前にも車イスに乗ったこういうクレイジーな犯罪者いたわよね…。誰だったかしら?」

 

「ミスター・グラスだよ」

 

そう答えたのは

 

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2000年にシャマランが世にはなった作品『アンブレイカブル』の無敵男!

この映画では、自分の病気とアメコミの読みすぎで超人を信じるようになった男・イライジャ(ミスター・グラス)と列車事故で無傷のまま生還した無敵男の物語です。

 

彼の胸元には名札が。

ダン。

 

 

誰だよ!!!

このネタ、誰がわかるんだよ!!!笑

 

 

実際、劇場のあかりがついた時、観客はポカーンでした。

あまりにも不親切なオチでニヤニヤしてたら、後ろのおっさんもニヤニヤ。

3秒間目が合って「あいつ出たな。アンブレイカブルのあいつだよな」というキモいコミュニケーションを交わしてしまいました。

 

映画が終わった後にもテロップが…

 

「急告!」

 

「『スプリット』と『アンブレイカブル』の世界がぶつかり合う。」

 

 

いやいや!ちょっと、おいおい!

たしかに、アベンジャーズとかユニバーサルモンスターとか「同一の世界観」で成立させる映画シリーズ流行っているけどさ!誰も知らない自分の過去作とコラボさせるなよ!笑笑

 

続編公開は2019年1月を狙っているらしいです。

 

これは面白い!笑笑

 

誰も観たがってない【ハゲ対ハゲ】の超人対決が観れるわけですよ!

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ていうかもうこれ現役プロフェッサーXとの対決じゃん。笑

 

しかも、ミスター・グラスもカムバックする予定だとか……

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みなさん!

「オチのための映画作りやがって」とディスられてきたシャマランがとんでもない領域に足を踏み入れてますよ!

新作映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』感想文② 〜本当の主人公は一体だれなのか?〜

絶対に失敗するという揶揄を覆したアメコミヒーロー映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

3年経ち、続編となる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』が公開された。

具体的な感想は下記の記事を観ていただきたい。

新作映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』感想文 〜優秀な遺伝子?エリート?そんなもんクソ喰らえ‼︎〜

 

↑ 前回のコラムで詳しく書けなかったことをここで記そうと思い、追記をさせていただく。

ネタバレ無しでの表現は難しいので、結末に触れてしまうことをご了承願いたい。

未鑑賞の方はそっとこのページを閉じて、今すぐ劇場へ…。

 

さて、前作vol.1ではバラバラだった5名が【仲間に成る】過程を描いていたが、本作vol.2では【家族に成る】物語だった。

厳密に言えば、すでに家族だったが主人公ピーター・クイル(クリス・プラット)が本当の家族とは何なのかを自覚する物語だ。

ベビー・グルートがその名の通りこの家族の【赤子】であることをOPでさっそく示唆し、ガモーラもドラッグスにも「私たちは家族」的はセリフを放ち、ピーターは実の父エゴと今の家族の間で葛藤しラストには育ての親・ヨンドゥが本物の父であると自覚する。ガモーラは目の敵にされていた義理の妹ネビュラの「お姉ちゃんが欲しかった」という本音を耳にし、ドラッグスは娘や妻を想いながらも、マンティスという新たなパートナー?と出会う。

そんなアットホームであったかい主人公たちに対して、今回登場するの2つの敵は「優秀な遺伝子だけを大切にするエリート主義の塊」という共通点がるのも興味深い。

つまり、この映画はどこを取っても【家族】というテーマが顔を出す。

しかし、ジェームズ・ガン監督という作家は幸せというものをありきたりな表面的なあたかさだけで描いたりはしない。1つの幸せを手に入れる時に伴う痛みや苦しみ切なさまでも映し出す。また、誰かが成長したり悟ったりする中で【取り残された人間】を必ず描いてくれる。

ジェームズ・ガン映画にホロっとさせられるのはこういった作家性ゆえというのも1つの理由になると思う。

では、本作でそれが当てはまるのは一体誰なんだろうか?

 

 

 

それは改造されたアライグマ・ロケットだ。

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科学者に改造されたという彼の生い立ちは悲しく謎めいていて、出生の秘密はハッキリとはわからない。

皆、普段から冗談を言い合い、喧嘩をしながらも大事な時には本音を言える中で悪態ばかりつく彼は一歩遅れているかまってちゃんと言っていい。

ピーターが実の父エゴと対面し、惑星に帰るとなった時にロケットは急変して「いいオヤジだといいな」と皮肉を言いすねている。しかし、いつもの余裕たっぷりの皮肉ではないことは表情を見ればわかる。

 

ヨンドゥからは

「おまえはイキがってるが、一番の臆病者だ。だから、わざと電池を盗んだ。優してくれる仲間を突き放すのはお前の心に空いた穴を隠したいからだ」

と図星を突かれ同様しまくる。さらにヨンドゥから

「他のやつを騙せてもおれにはわかる。なぜなら、お前は俺だからだ!

 

 

ドキーーーー!!!

 

 

2人は共鳴する。

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クライマックスのエゴの星では、ヨンドゥが自分の命と引き換えに息子ピーターを救う決心をした時にも最後に言葉を交わしたのはロケットだ。

息子を救う決意をした父をその場に残し、ロケットはみんながいる船に戻る。

 

ガモーラ「ピーターは?」

ロケット「……」

ガモーラ「ダメよ。置いていけない」

 

そんなガモーラを後ろからショック銃で眠らせるロケット。

「仲間を失うのは1人で十分だ」

 

ドラッグス「ピーターはどうしたんだ!?」

 

皆がピーターが取り残されて死んでしまうと心配する。

ここで観客、ロケットが知っている真実と、ガモーラ、ドラッグスたちが心配している事でズレが発生する。

事実、死ぬのはヨンドゥだ。しかし、仲間たちはピーターを心配する。ヨンドゥのこれからやろうとしていることを知らないから。ヨンドゥの決意を受け止めたのはロケットだけ。

 

自分の本質を見抜き、理解してくれる仲間をいきなり失ってしまった悲しきアライグマのロケット。

ヨンドゥの意志を継いだのはロケットだった。その一方で、周りのみんなは過去、現在の家族とのケジメをつけた。

ピーターは本当の家族を手に入れ、ガモーラは妹のネビュラを愛し、ドラッグスは新しい出会いがあり、グルートは赤子として皆に迎え入れられた。そんな中で、ロケットは……?

そう。この映画のラストはロケットのクローズアップで終わる。

君はこれからどうするのか?

と問いかけられたように。

それは、決して冷たいショットではない。皆が一歩前へと進む中、取り残されてしまったロケットを心から労わる監督の愛を感じるあたたかいショットだった。

本作の陰の主人公はロケットだ。いや、厳密には次の作品へとつなぐ架け橋だ。取り残されたロケットを監督は救ってくれるはず。

新生ロケットに期待したい。けど、空気を読まない毒舌だけは残して欲しいな。

新作映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』感想文 〜優秀な遺伝子?エリート?そんなもんクソ喰らえ‼︎〜

 

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地球からさらわれたヤリチン。

音楽を知らない殺人緑女。

冗談と比喩が通じない筋肉バカ。

凶暴な喋るアライグマ。

木。

 

以上5名で構成されたヒーローチーム【ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー】は3年前の2014年 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の1シリーズとして世に解き放たれた。

誰も知らないヒーロー達に対して、周囲は「マーベル映画で初の失敗か」と噂をしたが、そんな愚かな疑いをひっくり返し大ヒットを記録。その功績はトロマ映画出身の優秀な脚本家でもあるジャームズ・ガン監督の力も大きい。このvol.1についてはかつて書いた筆者の記事を参照していただきたい。

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』感想文 〜楽しい‼︎面白い‼︎笑える‼︎泣ける‼︎ちゃんとダサい‼︎〜

 

 

【誰も知らなかった】ヒーローたちは3年経ってスクリーンに帰ってきた。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』

 

キャラクターの説明と仲間になる成り行きは前作で済ませ、今回のvol.2で監督はキャラの深掘りと応用を思う存分やってのけた!

 

本来ならばネタバレ無し!で書きたいのだが……ごめんんさい!

興奮状態なのでガンガン書かせていただく。

 

この記事を読む前からもう行く気満々のあなたはもちろんこれ以降は読まずに劇場へダッシュ!

観る気のない方。読んでからでいいので、行ってくれ!いいから!ていうか、黙って行け!面白いんだから…!!!

 

 

まず、本作はシリーズ2作目ということで当然気になる部分だし、いろんな意見あるだろうけど、前作のvol.1は絶対観たほうがいい。

例えて言うなら、STAR WARSをエピソード2から。もしくはエピソード5から観て話の内容を掴みつつ感動できるか?ということ。

STAR WARSにも通ずることだが、本シリーズは【観客が観る銀河の物語】として作られていない。1つ1つの設定や状況を丁寧に客観的に字幕やナレーションで補うことはせず、そこに当たり前のように銀河が横たわりそこで物語が繰り広げられる。

つまり、ご丁寧なナビはなく目や耳で理解し、追い付いてこい。っていう作りなわけだ。世界観を構築する上で、この作り完全に正しい。

こういった事もあるので、もちろんvol.1で起きた事柄を回想するなんていう海外ドラマみたいなやり方はしていない。なので、確実に前作は観るべし!

 

さて!その上でどんな話か。

 

地球。1980年代。ピーターの父であるエゴが、恋人(ピーターの母)とドライブをするシーン。愛し合っている2人は森に得体の知れない花のような植物を植え、それを見守っている。

そして、現代の銀河。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(以下、GOG)たちは金箔人間ソヴリン人たちに雇われ、星のエネルギー源となっているエネルギーの源である電池を怪獣から守っている。

緊迫した状況ながらも、いつもの調子で爆笑会話を繰り広げているGOG!

そこへ超キモい宇宙怪獣がドシーーーン!!!

さぁ、みんなで戦うぞ!4人が立ち向かい悪戦苦闘する中で、ベイビーグルートはスピーカーの線をつなぎピーターお気に入りの『Mr.blue sky』を再生。仲間たちが後ろで吹き飛ばされる中でグルーとはご機嫌に踊り出す……そこで、タイトルどん!!!!

 

GUARDIANS OF THE GALAXY vol.2

 

はい!!!前作同様ここで思考停止!!!

 

もう傑作確定。今年1位でっす。

ここから長回しノーカットで踊り歩くグルート。その後ろでは仲間たちが叩きつけられ、ふきとばされながらも「Hey!グルート!大丈夫?」「その虫は食べたらダメよ〜」とかって心配してる。

ここから読み取れる。グルートはみんなの中で【赤ちゃん】的存在になっていて、彼を中心に団結している。前作でグルートは身を犠牲にして仲間の命を救っているから、こんどはみんなが彼の面倒見てるわけです。

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つまり、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー家という一家に赤ちゃんが誕生したという意味合いになっている。前作では5人が【仲間】になる過程を描き、本作では【家族】でスタートしている。

この【家族】というのが本作で大変重要なテーマになるんですが、そのテーマをハイセンスなオープニングの中でちゃっかり宣言している。もうすでにこの時点でvol.1よりバージョンアップしてるわけなんですな!!

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無事に怪獣から電池は守ったものの、アライグマのロケットがこの電池を盗む事で金箔野郎どもから追われるハメに。この金箔野郎共もプライドの高い面倒なやつらで、優秀な遺伝子だけを継承し、業務的に繁殖をするという価値観。面白いのが戦い方で、GOGを追う小型の船はすべて遠隔操作。みんな遠いところからシューティング・ゲームをするかのように遊び半分でGOGたちを追い詰めます。

そんなピンチを救ってくれるのがピーターの父親であるエゴ!カート・ラッセルが演じている時点でもう怪しいんですけど、この親父はとんでもないヤリチン野郎でした!

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エゴは天人と呼ばれる神のような存在。銀河に星を生み出すことができます。ていうか、そもそも彼自身が星。←この辺はもう本編観てください。

かつて、彼は自分の存在意義に答えを求めようと、あらゆる惑星を放浪。人類という生命に遭遇しますが落胆します。「こんなことならすべての星が俺になってしまえ!」そう思ったエゴは銀河のあらゆる惑星に女を作り(ピーターのママもそのうちの一人)、我が天人の力を継承する優秀な子孫を作りつつも、あらゆる星に自分のマーキング(例の得体の知れないお花)をし続けます。

つまり、いろんなところに女を作るヤリチン野郎なんですわ!(だから、ピーターはいろんな女に手を出してたんですね!)

 

まさに、エゴ!!!

自己中心の塊な訳ですわ!

 

そんなエゴの陰謀も知らずに、やっと会えた父親に魅了されていくピーター……。

そこに現れた育ての親であるヨンドゥ。

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血は繋がっていないけど、家族である【ヨンドゥ】と【GOGの仲間】たちがいる中で、本物の父親が現れて…さて、どうなる!?ピーター!!!

ざっくり言ってしまうとこんな話。

 

今回の直接的な敵は2派閥います。

1つはプライドだけ高い金箔星人そして、ピーターの父・エゴ。

面白いのが、どちらの敵も共通している点が2つあり「自分たちを高貴な人種だと思い、それ以外を下等生物として見下している」「優秀な遺伝子残したがる」です。

これに真っ向から立ち向かうのが生まれながらに辛酸を舐め、必死な想いで生きてきた犯罪者集団【ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー】

つまり、敵とは根本的に真逆な存在になっている。エリート思想 vs 負け犬軍団というクソ上がる構図なんです。

下から突き上げ、泥臭く戦うGOGのおかげでこっちの溜飲が下がる!最高に気持ち良いカタルシス!

優秀な遺伝子?民族?エリート?そんなもんクソ喰らえ!

こういった敵との構図戦う意味も前作よりバージョンアップされていますよね。前作は金がきっかけで団結し始めるわけですが、今回は生き様と生き様のぶつかり合い!本人らに意識はなくとも、思想と思想の戦いになっている、くぅウウウウ!あっち〜〜〜〜〜!!!

 

そして、もう1つ踏み込んだテーマが『父と子』です。

実の父 エゴ。育ての父 ヨンドゥ。

前作から感じていたヨンドゥのピーターに対する異常な愛は本作で何十倍にもなって描かれます。その愛の不器用かつデカさに絶対に涙腺崩壊。

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降り注ぐしかばねの中を歩くヨンドゥ…かっちょええですね〜。

 

筆者は気になっていました。

前作でピーターは母親からもらった「最強ミックス」のカセットテープの封を開けます。

vol.1とvol.2は母親からもらったテープに入っている音楽が映画を彩る。けど…そのあとは?つまり3枚目のテープは誰から受け取るのか。という事です。本シリーズにとって音楽は肝ですから、使い回しなんてできない。けれど、母親はもうこの世にいないので新たなテープを受け取る事なんて出来ない。

本シリーズで【音楽】は主人公と地球、そして母をつなぐ大事なアイテムなので、GOGの仲間から受け取るのもちょっと違う。

本来の流れなら、ピーターは実の父であるエゴから新たなテープなり音源をもらうはずなんですよね。親から受け継いでいくという意味合いで。だがしかし、……ここがヨンドゥなんですね〜(泣)

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ヨンドゥを通じて「家族とは血のつながりではない」「自分が探していた大切なものはもっと目の前にあった」とピーターは悟ります。これは【父】との絆の悟りでありながら、GOGを本当の【家族】だと改めて感じる悟りともつながっていく。イコールで結べるんです。

このように2つのテーマを1つの表現で見事に描写しているので無駄がない。こんなの簡単にできることじゃありません。

ちなみに、唸ったのがラストカット。本作ではみんなが過去の家族にけじめをつけたり、新たな家族を迎えたりする中で一番苦い思いをしているあるキャラクターがいるんです。この映画は彼のクローズアップで終わる。劇中で実はこっそり心を揺さぶられてるの彼なんですよね。初めて核心を突かれた。みんなにはもうないプライドや壁が彼にはまだあって、そこをツンツン突かれたんです。

 

上記のようなテーマを濃厚に描きながら画的な既視感はちゃんと0。

見た事ない世界の連続です。

例えば、STAR WARSではおなじみのハイパースペース描写。星から別の星へ瞬間移動するわけですが、本作はそのワープでさえオリジナリティ溢れるルールを入れている。また金箔野郎どものゲーム感覚な戦闘や肌にぴったりと密着したジェル状の宇宙服。ロケットが使用するガジェットの新鮮味、何と言ってもラストの葬式で用いられた色彩の豊かさ。とにかく枚挙にいとまがない。

SF映画としての「見た事あるな〜」というおなじみのアイデアを抜け目なくアップデートし、再提示する。

ていうか、vol.1で見たようなアイデアや似たようなシーンが全くないんですよ!1つも!シリーズ内でアイデアを使い回すようなことさえしてないんです。

その志の高さたるや!たまりません!

 

もうこんなハイレベルになってくると、近年のSF映画におけるマスターピースです。いや、ていうか映画史に刻まれる新たな名作と読んで過言じゃない。

【誰も知らなかったヒーロー】が世間をぎゃふんと言わせてる。映画の中でも外でも。

 

 

新作映画『パッセンジャー』感想文 〜【故障】と【性欲】で成立している驚愕作品!〜

 

 

これネタバレしないと、本作の魅力を伝えるには難しいのでネタバレいたします!!!

 

されたくない人、逃げて〜〜〜〜!!

 

 

 

 

映画の予告編などの宣伝と本編のギャップに驚愕することなんてざらにある。

そんな現象を肩透かしと言ったりするが、筆者にとって本作『パッセンジャー』本編と広告とのギャップは魅力的だった!

 

地球からの移住計画。新たな星に到着するには120年かかるため乗客は冬眠状態で宇宙船に乗って旅をする。

が……90年も早くクリス・プラット(以下、略してクリプラ)は目覚めてしまった。5000人もの乗客を乗せた宇宙船に彼はただ一人。

このまま孤独死するかと思いきや、眠れる美女・ジェニファー・ローレンス(以下、略してジェニロレ)も目覚めた。

一体……なぜ!?理由は!??

 

この煽りを聞くだけで、観客の想像は膨らみまくる。

 

人類側の陰謀によって2人はあえて目覚めさせられ、秘密のミッションを課せられたのか?!

いや、人工知能によって目覚めさせられ人類の陰謀を防ぐのか!?

いやいや!新種の生命体!つまり宇宙人による操作か!?

もっと神秘的に!旧約聖書に描かれる最初の人間【アダムとイブ】的な話で、1度観ただけでは理解不能な深いお話か……

 

しかし、なんと!そんなチープな予想に収まるような映画ではなかった!

 

観てビックリ!まずフライヤーに描かれているこのキャッチコピーが嘘だった!

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2人が目覚めた理由は1つ。

…ではない!2つだった!!!

 

乗客5000人

目的地まで120年

90年も早く

2人だけが目覚めた

理由は

 

【故障】【性欲】

 

だった!!!

 

なんてこった!整理していこう!

 

まず、クリプラが冬眠装置から目覚めたのは隕石激突による船の故障だってよ!!!ワオ!

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クリプラは1人で1年間、船で過ごしヒゲもボーボー。アンドロイドのバーテンダーに愚痴をこぼしながら酒をかっくらい、バスケやダンスのゲームで遊ぶ毎日。

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しかし、そんなの気が狂う。

自ら死のうとした時、冬眠ポットに眠る美女・オーロラ(ジェニファー・ローレンス)に一目惚れしてしまう。

 

「ポットを壊して彼女は目覚めさせれば、残りの人生ウハウハで過ごせるな〜…」

 

と妄想にふけってしまうクリプラ!

 

「けど、ダメダメダメ!そんなことしたら、彼女の人生を奪うことになってしまう…!」

 

毎日、自分に言い聞かせながら葛藤する。あまりにもムラムラしてる様子なので、ポットの前で自分磨きし始めたらどうしようかとヒヤヒヤものだった。

 

そして、ついにクリプラは我慢できずにポットを故障させ、ジェニロレを目覚めさせる!

プシュ〜〜〜〜!開くポット。慌てて逃げるクリプラ。

 

ポットから目覚めて船内をうろつくジェニロレ。

「誰かいないのかしら〜?誰か〜?」

 

そこへ何気ない顔して現れるクリプラ。

「え…?何やってんの?偶然!おれもなんでか知らないけど目覚めちゃったんだよね!エヘヘへ…!」

 

エヘヘじゃねーよ!

何しらばっくれんだ!お前だろ!ポット壊したの!!!

 

だから、ほら!見て!

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この時も!

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こんな時も!

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どんな時もいやらしい顔して彼女を見つめている!!

「かわいい〜…やりてぇ…」

 

でも、そこまで攻めれないよな!同じ状況でこんなにエロい子いたら起こしたくなるよ!

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無理矢理、起こしたのが1人で偉いよ!クリプラがもし絶倫だったら、何十人も美女見つけて全員叩きおこして、とぼけたリアクションしてさ!

「我々が起こされたのには理由がある」とか言って、ぽい顔して語ってればいいわけですからね。

で、飽きたらまた別の子を起こして

「なぜ俺たちだけが起こされるんだ…!」

って格好つけてればいいんですもん。

そういうことはしなかったわけだから偉い!

 

とにもかくにも、クリプラは【故障】 ジェニロレはクリプラの【性欲】によって、ポットから目覚めた!

 

だからね、この2人が恋に落ちるってそりゃそうだろって。クリプラは女をおとすために頑張ってたけど、こんな絶望的な状況だったらどんな女だって目の前の人を好きになるよね??いろんな条件重なってるし。

 

結局、映画の後半でこの宇宙船に隕石が刺さってて、それをどうにかしないと爆発して5000人が死ぬってわかる。

その隕石を外すというスペクタクルっぽい盛り上がりがあって、もちろん無事に外せて5000人は安泰!イエイ!

最後には、1人だけなら再び冬眠ポットに入ることが出来るって判明するんだけど、ジェニロレはクリプラを選んでそんなことはしない。

2人は死ぬまで一緒に過ごしましたとさ。って話なんですけど、この話、凄くないですか???

なんのロマンもないんですよ!

最後に無理矢理、隕石云々で盛り上げはあるんですけど、改めて全体を見て一番面白いところはクリプラがムラムラしてジェニロレのポット開けちゃうところなんですよ!

だって、隕石云々ってところは2人で解決出来ちゃう感じとかなんだかリアリティないんですよね。

変ですよね!この映画!

たしかに「5000人の乗客を救うために起きた。そういう使命、運命だった」と総括することは出来ますよ。けど、だったら謎の故障でいいし、100歩譲って、故障だけどそれも運命だったってまとめるとしたらジェニロレはとんだ迷惑っすよね!

だからね、筆者的にはこの映画に運命もドラマもクソもないと思ってるんです。

 

事故で冬眠ポットから起こされたおじさんがムラムラしちゃって美女を無理矢理、起こさせる。

美女も選択の余地ないから2人でうまくいって、乳繰り合って暮らせました〜っていう話なんですよ!

 

すごくないですか!?それを成立させちゃってるの!!もう!必見!

 

新作映画『暗黒女子』感想文 〜少女6人が一生懸命に観客を欺こうとする愛おしいキュンキュン映画〜

 

ミステリー映画の内容を語る際に「ネタバレ」には注意しなくちゃいけない。

 

ましてや、すべてを裏切るラスト驚愕の24と予告編に謳われているなら尚更。ネタバレしないように上手く要点を避けながら述べていかなくてはならない。

 

映画の記事を書く端くれの筆者としてもそこは考慮し、ネタバレをしないよう注意して本作『暗黒女子』の魅力を伝えなくてはいけないのだが……ここはいつみ先輩の名言をお借りしよう。

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いぃぃ〜やぁぁ〜だっ…‼︎

※このシーンは最高である。

 

ネタバレはします!!!ガン!ガン!します!

むしろ後半は雑にバラしてしまいます。

なぜならこの映画は見始めてから、あっという間に誰がなんとなく黒幕かわかってしまい、予想通りその人が犯人だから。

ていうか、もはや予告編を観ただけでピンとくるというか。むしろピンときすぎて「いやいや。そんなバカな…」と裏を読もうとするかもしれないが、大丈夫!この映画は真正面からストレートな球を投げてくれている!伏線とよく言うが、本作においては線は伏されず、にピーーーンとわかりやすく目の前に張りまくられている。

 

では、どんな風に線が飛び出しまくっているのか。ストーリーをざっくり追いながら述べていこう!

 

本作は、あるミッション系の女子校のカリスマ【いつみ】が校舎屋上から転落死した真相を探るドラマとなっている。

学校というヒエラルキーのトップにいた人間が退場するというストーリーは桐島を彷彿とさせるが、絶対的な存在を喪失したことによる周りに及ぼす影響に焦点は当てず、あくまで誰がいつみを殺したのか?というミステリーになっている。

被害者・いつみが所属していた文学サークルの中に犯人がいると睨んだ「真相を探る」清水富美加はサークルの部員に【今は亡きいつみにまつわる小説】を書かせ、犯人を浮かび上がらせようとする。その小説の朗読会を恒例の闇鍋を行いながら、小説サークルの小洒落たサロンで開催するのだ。

 

 

ん?ちょっとお待ち。

 

闇鍋?

 

見えた!!!線だ!ピンピンに張ってある!!

 

あまりにも不自然すぎて、もう怪しいじゃないか!

 

この鍋には誰が何を入れたでしょ〜か…?うっひっひっひ…

とニヤつく監督のドヤ顔が目に浮かぶ。

「前回の闇鍋では、マシュマロを入れたお茶目な方がいらっしゃいましたね〜ウフフフフ♪」

緊迫する4人の生徒たちの中でご機嫌な清水富美加。

この中に犯人がいる!

と、お互いを疑いピリピリした雰囲気が漂う中で朗読会はスタート。

まずは平祐奈の小説だ。

『太陽の人』と題された小説は自分がいつみ先輩に惹かれて、文学サークルに入部したこと。いつみ先輩が太陽のように明るい人で自分に家庭教師のアルバイトまでくれたという、崇め奉る内容。しかし、その後に同じ文学サークルの清野菜名がいつみ先輩の父を誘惑していたという暴露……

あ〜!じゃあ、清野菜名か犯人だ!!!

とは、ならない。なぜならこの後に残り3名の朗読が待っているから。

残り3回も清野菜名が犯人です的告発を聞かされるとしたらそれは観客にとって退屈という名の拷問であるからだ。

この時点で物語の筋道に察しがつく。

芥川龍之介原作、黒澤明監督の『羅生門』 近年では大林宣彦監督『理由』中村義洋監督『白雪姫殺人事件』のようなプロットなのだろう!

事件は起きるが、証言者の内容はみんなバラバラで真相がなんなのかわからなくなって…ラストは何かどんでん返しがあるのだ!

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平祐奈の朗読が終わる。

 

「あなたらしい文体で個性が出た素敵な小説でしたね。ウフフフフフ…♪」

 

と冷静に評論する清水富美加。

ここでスクリーンに向かって指をさし叫びたくなる!

 

え・・・あの人犯人だよね・・・?

冒頭でもマシュマロ云々とかって余裕ぶっこいてたし・・・お前なんか知ってるな!??

……まぁまぁ落ち着いていこう。こんな序盤から犯人らしい人が犯人らしい振る舞いをするなんてありえないんだから!

 

平祐奈の後には、残り3人の朗読が続く。4人がそれぞれバラバラの証言をし全員が別々の人を疑っている。ますます羅生門的なテイストの話になってきたぞ〜!!

1人の朗読が終わるごとに必ず清水富美加が「ウフフウフフ♪素敵な文章でしたわ」とご機嫌にかつ冷静なコメントを入れていく。

 

・・・・ちょ、おい!!!!笑

やっぱりお前だろ!!!犯人!!!

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予告編では【真相を探る】とかって言われてるけど、お前のその顔はもう「すべて知ってる人の顔」なんだよ!!!

 

全員の朗読が終わると、富美加ちゃんが立ち上がる。

富美加ちゃん「ウフフフフ♪こんどは私の番。私はね、いつみが書いた小説を持ってるのよ…」

どん引きする4人!なんであんたが持ってるのよ!

富美加ちゃん「座りなさい!朗読会のルールは破ってはいけないのよ。ウフフフフ…」

といかにも黒幕らしいゲームマスター的発言。 

 

いつみの小説には、4人の秘密が書かれていた…。

 

平祐奈は老人ホームのお手伝いと称してエロじじいから金をもらいエッチなことをしていた。

清野菜名は女流作家として受賞した作品は、実は盗作だった。

玉城ティナは双子の妹を事故に見せかけ怪我させて、自分が代わりに日本に留学した。

小島梨里杏は実家の老舗旅館に火をつけた。

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いつみは007顔負けの優秀なスパイっぷりで4人全員の上記の秘密を掌握し(短期間にどうやってこんなに掌握したのかは不明)彼女らを脅して、無理矢理、文学サークルに入部させ「自分が主役として輝けるようこの4人に脇役を演じさせる」という訳のわからない目的を果たしたというのだ。

ここからは面倒なのでいろいろ端折り、とんでもなく雑なネタバレになるが、いつみはある件で4人に裏切られてそれを根に持っていたようで、本当は自分は死んでなくて、これからみんなを殺しに行くよ〜!みたいなことが手紙に書かれていた。

 

富美加ちゃんが代読するいつみの小説は4人を半狂乱にさせる!雷の光の錯覚によって、富美加ちゃんが一瞬いつみに見える。 

この時、筆者はハッとした…!

もしかして、これは…清水富美加の出家先であるあの団体の総裁である某先生の得意技なんじゃないか!!

生きていようが死んでいようがその人の魂を自分に憑依させ語り出す……あれだ!!

こんなところにも伏線が張られていたのだ!!!恐るべし!!!

 

しかし、富美加ちゃんは余裕の表情で語り出す。

「大丈夫。いつみは私が殺してその遺体はバラバラにして、闇鍋にれたわ。ウフフフフ♪」

 

ピンポン!ピンポン!

ピーーンポーーーン!!!

大正解〜〜〜!

 

すべてが正解だった!!!

 

最初から疑っていたことは見事に綺麗に当たっていた。

つまり、本作『暗黒少女』は最初から怪しいと思っていた人が予想通り黒幕で、怪しいと思っていた闇鍋はやっぱり怪しかった。というとんでもないどストレートなミステリー映画なのだ!

 

しかし、落ち着こう。

最初から観客がわかりきってミステリーなのに、女子6人が一生懸命に欺こうとするのはなんとも愛おしいではないか!!!

むしろ、観客の予想を完全に裏切りとんでもない着地をこの映画がしてみせたなら、きっと騙した彼女らを恨み一生応援できなくなるはずだ。

そんなかわゆい映画が本作『暗黒女子』なのだ。