新作映画『モアナと伝説の海』 感想文 〜三代目ニュー・ディズニー・プリンセス・シリーズ(勝手に命名)〜

※映画の内容、結末に触れています。

 

『モアナと伝説の海』

「アナと雪の女王」や「ズートピア」など、ヒット作を連発するディズニー・アニメーション・スタジオが、南の島と大海原を舞台に描いた長編アニメーション。「リトル・マーメイド」「アラジン」のロン・クレメンツ&ジョン・マスカーが監督を務め、海を愛する美しい少女モアナが、島の危機を救うために冒険を繰り広げる。かつて世界を生んだ命の女神テ・フィティの心が、伝説の英雄と言われたマウイによって盗まれ、世界に闇が生まれた。それから1000年にわたり、モアナの生まれ育った島モトゥヌイでは、外洋に出ることが禁じられていた。そんなある時、島で作物や魚たちに異変が発生。海の不思議な力に選ばれた少女モアナは、いまもどこかで生きているマウイを探し出し、テ・フィティの心を元あった場所に戻すことができれば世界を救えると知り、父親の反対を押し切り大海原に旅立つ。短編「インナー・ワーキング」が同時上映。【映画.comより】

 

ディズニープリンセスというかつて生み出した概念をディズニー自身がぶち壊しています!!!

そう!これは三代目ニュー・ディズニー・プリンセス・シリーズ(勝手に命名)なのです!

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ディズニー映画の可憐なるお姫様。

それを救い出す白馬に乗った王子様。

王子が姫にキスをして目覚めさせたり、ドラゴンと戦ったり、呪いを解いたり……。もはや古典と言ってもいい王道ストーリーを世に確立してきた。悪いやつがやってきて呪いをかけられて、王子ポジションのキャラが救ってくれる!!!物語上の役割で言えば女性はわりかし受け身。

「女の子らしさとはこうなのよ〜〜〜〜」と世界中にビビデバビデブ魔法をかけてしまったのがディズニーですよね。

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しかし、最近のディズニーは自ら世界中にかけた「女性らしさ」という魔法をぶち壊し始めている!!!女性が活躍する時代となり、過去に提示したメッセージ性をガラッと変えて再提示する。こういうお仕事をしてらっしゃるんすね。

ラプンツェルやアナ雪が完全にそれです。だから、観た人は予定調和でない面白さを感じているんじゃないでしょうか?

 

じゃあ、本作はどんなだったかってことを踏まえて書き殴っていきます。

 

主人公モアナととなる半神マウイ!!

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かつてマウイが盗んでしまった女神の「心」という名の緑の石をめぐる物語で、この2人のバディームービーでもあります。

モアナは「サンゴ礁より向こうの海に出てはいけない」というタブーがある島の出身なんですが、海に選ばれたことによってその掟を破って冒険へ出ます。

島のみんなが「海コワイ。海コワイ」状態の中で、祖母は「いきんさい。いきんさい」と背中を押してくれる。

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『ミス・ペレグリン』もそうでしたけど、このグランパ・グランマと孫の絆って心の琴線に触れますよね〜。これってあるでしょ?父、母超えて祖父、祖母と1本で結ばれた独特の絆って。この手の類は涙腺を刺激しますね。

モアナは選ばれし者とは言いつつも船の扱い方がわからないから、悪戦苦闘。活発だけど未熟な女の子。(ちなみに、聴き間違えでなければ劇中で8歳と言われいて、「かわいいなぁ」と思ってた自分に罪を感じました)途中で出会ったマウイ

「女王様は女王様らしく、島に帰れよ!」

とディスられちゃうわけです。

これって世の中の偏見を丸々セリフに出してる気しますよね。つまり、女性は家事育児を家でおとなしくやってなさいってことですよね。モアナはもちろん反発してめげずにグイグイいくわけです。モアナは待つことはしてない。走って、中に飛び込んで行って、戦って、もうアクションしまくりなわけです。

 

この対になってるのが半神マウイ

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彼ももともと人間だったんですが、神に選ばれ姿を自在に変えることのできる神の「釣り針」を承ることで半神となったキャラクター。「選ばれし者」というモアナと同じ境遇なんですね。

マウイの面白いのが、今まであった人生の物語が自然と体に「刺青」となって刻まれる。しかも、この刺青は生きていて、動くわけです。

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本編内でこの刺青とマウイがやり取りをするわけなんですが、これって『アラジン』のジーニーを踏襲してると思うんです。

だけど、刺青はジーニーほどの力はない。マウイといろいろコミュニケーションを取ることはできるけど、身体の外には出れないんです。ジーニーと比べると刺青はとんでもなく非力です。

対するモアナは海が味方。ジーニーと魔法のじゅうたんを組み合わせたみたいな超つえぇ力なんです。男性マウイに非力な刺青を味方につけ、女性モアナには強力な海を味方につける。過去に生み出した『アラジン』のジーニーを彷彿とさせることで、あえての対比構造を作り、主人公が男性から女性に移行していることを見事に表していますよね。

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そして、もっとも印象的だったのはマウイが持つ最大の武器である神の釣り針!

これによってマウイは自在に姿を変えれるし、戦闘力も高いわけですが、この釣り針がうまく使いこなせなくなったり、終盤で傷が入ると同時にマウイの心はポッキリ折れるわけです。釣り針の力を過信している時は調子がいいのに、やられちゃうとネガティブになる…。

つまり、この神から与えられた釣り針はマウイにとって男性器なんです!

 

いや、いや。まじで言ってます。

 

象徴的な意味での「男性器」ですよ、これ。

つまり、この釣り針は彼のアイデンティティーであり、誇りであり、男マウイとしての象徴なんです!男ってこういうものが折れると、とてつもなく凹む生き物じゃないですか???いろんな意見があると思いますが、僕は男ってそういうもんだと思ってます。女性の方がこういう時、強い。男の方がナイーブだったりするんです。

だから、マウイの釣り針が傷つくことで凹む様子……すんごいわかっちゃうなぁ。わかる!わかる!

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このように主人公の2人を通じて、「女性らしさ」と「男性らしさ」を再提示してくれています。

もちろんですが、上記のような男女観が全員に当てはまり、正しいと言っているわけではありません。過去に築き上げてきた作品よりも男女のキャラクターの描き方の幅が広がってきているということです。過去に描いた女性らしさ男らしさが悪いとかそういうことではありません。

 

長々と、男女の描き方の再提示の話をしてきましたが、本作は勧善懲悪モノではないという点にも注目できます。

大胆に言えば、悪者が登場しません。この映画。

ラストは悪者だと思っていたラスボスも「心を無くしたアレ」だったわけで、倒すのではなく、救う戦いにシフトしていくんです悪人を殺せば世の中が変わるという考えではなく、相手を救うことで世界を変えていく。

また、主人公が生まれ故郷に平和を取り戻すだけでなく、祖先からあった本能を呼び覚まし、新しい価値を創造して前に進む終わり方もイイですよね〜。

 

こんなんいろいろ書いてますが、もちろんこむずかしい話ではございません!日本版チラシのイメージとは全く違うスペクタクル超大作に仕上がっているので、絶対楽しめます!海や踊りの表現は豊かで新鮮だし、ミュージカルであることに作品内でツッコミもちゃんと入れてて笑えます。

特筆したいのが、目がイっちゃってる鶏・ヘイヘイに関してはディズニー史上1位といってもいいくらいぶっ飛んでるキャラクターで笑いが止まりませんでした。彼のスピンオフか短編を期待します。

 

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