映画コラム

 

若干、内容に触れていますので、観る予定の方は今すぐ閉じて!

 

『哭声 コクソン』

 

「チェイサー」「哀しき獣」のナ・ホンジン監督によるサスペンススリラー。平和なある村にやってきた、得体の知れないよそ者の男。男が何の目的でこの村に来たのかは誰も知らない。村じゅうに男に関する噂が広がる中、村人が自身の家族を虐殺する事件が多発する。殺人を犯した村人に共通していたのが、湿疹でただれた肌に、濁った眼をして、言葉を発することもできない状態で現場にいることだった。この事件を担当する村の警官ジョングは、自分の娘に殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。娘を救うためにジョングがよそ者を追い詰めるが、ジョングの行動により村は混乱の渦が巻き起こってしまう。警官ジョング役にドラマや映画の名脇役として知られ、本作が初主演となるクァク・ドウォン。國村隼がよそ者の男を演じ、韓国の映画賞・第37回青龍映画賞で外国人俳優として初受賞となる男優助演賞と人気スター賞のダブル受賞を果たした。

 

主人公とその周辺の環境(特に家族)のおっとりとした生活スタイルに油断させられる。

冒頭、田舎で普段絶対に起きない殺人事件が発生。警察官である主人公ジュングはその連絡を聞き、家を出ようとするが母に呼び止められる。

 

「ちょっと、あんた。ご飯だけでも食べてきません」

「なに言ってるんだよ。人が死んだんだぞ。急がなきゃ」

「少しでもいいから食べていきなさい」

「ダメだって〜。時間ないんだよ」

 

誰もが思い当たる実家での母親との会話をしたと思えば、次のカットでは妻、娘、母とテーブルを囲って朝食を食べているジュングという思わず笑ってしまう映画のスタート。

 

…超かわいいんです、このお父さん♡

 

そのあと、あらゆる場所で一家の不審死が続くが、ジュングはそのままだし、あらゆるシーンで笑ってしまう。実際に劇場でも大爆笑の連続!

ここからわかる通り、今回の主人公は警察ではあるが「殺人の起きない田舎町」というぬるま湯に浸かっていたこともあり性格もヌルい。

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こんなノホホンとした主人公が事件を解決できるわけがない。「警察」という役柄ではあるが、極めて一般人と言っていいほどのポテンシャル。

 

ある日、村で続く不審死の原因が滞在している日本人(國村隼)のせいではないかと、噂が流れ始める。ある人は國村が山中で鹿のナマ肉を食べているとことを目撃し、ある人は國村が村の女を犯したと噂をする。次第に、ジュングの夢にも國村が現れ始める……。

ここでの國村噂描写はすべて単純であり、ある意味ではちゃっちい。都市伝説のような描かれ方をしているために本当に起きた出来事のように見えない。映画前半の國村登場シーンはすべてこのタッチ。つまり、謎の日本人に対してのイメージはすべて誰かの「噂」を通じているものであり、イコール「真実」とは異なる。⇦ココがこの映画のミソとなる!

この時点で観客はジュングと共に、容疑者を謎の日本人・國村隼のみに絞る。

本当に彼なのか?では、一体なぜ?そして、どうやって…?

 

ちなみに、今回の國村隼さん。あらゆる怖い演技をしていますが、一番怖かったのは「無言でシカト」のシーン。家を荒らされても「無」犬を殺されても「無」 何をされても「無」

この「無」こえ〜〜〜〜〜!!!

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自身の娘にも村の死人と同じ症状が現れ始めたことによってジュングにも余裕がなくなり変貌していく。「愛する娘をどうやったら救えるのか!??」この憤りをどこにぶつければいいのか…。彼の矛先は容疑者である謎の日本人に向けられ、事態はとんでもない方向に転がっていく。

映画のはじめは笑っていたはずなのに、ふと気づけば頭と心をグラングラン揺らされて、我々観客も徐々にダメージを食らい、もうぐっちゃぐちゃ!

 

筆者にとって國村さんの怪演よりも、ジュングの強烈な変貌が一番恐ろしかった。

最初はのほほんと家族と共に暮らしていた彼が「不安」と「疑い」によって娘のためなら何でもしでかす存在になっていく。半人前だった父が、逆境によってねじまがっていくのだ。

 

本作は最後の最後。ギリギリまで真相が明かされない映画だが、ミステリーだと思わせて実はそうではない。中盤に登場する金をせびる胡散臭い祈祷師あたりから観客の推理する権利は手元から離れ、訳わかんなくなる!!!クライマックスではその振り回され方がピークに達し、限界よろしく状態で映画は幕を下ろす。

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映画を観ていると、「村」という閉鎖的な空間で呪いによる死が繰り広げられていく様は『八つ墓村』を連想させ、祈祷師のくだりなどは『エクソシスト』などの悪魔払いかと思わせ、とあるシーンでは流行りのゾンビ映画かと思いきや、結局どの映画にも当てはまらない。

「このシーンに○○のオマージュが入っている〜!」「あのシーンは○○の影響を受けている!」とマニアの間で騒がれる事が多くなりすぎた最近のハリウッド映画のようにはいかない。

つまり、本作『哭声 コクソン』は映画においての「引用先」がわからない。過去にあった映画の何にも当てはまらない作品にしあがっていて、羨ましすぎる。こんなに既視感の少ない不思議な映画を観れるなんて今の韓国映画が相変わらずイキイキとしている!!

 

日本人として登場する國村隼さんのふんどし姿、ナマ肉食事シーン、ハイテンションの祈祷シーン、そして何と言ってもラストのあれ……とにかく必見。ぜひ。

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