読んだら必ず観たくなる

もし本作『ミュージアム』を観るつもりだよ〜って人がいたら、予告編と原作には手を出さずにこの映画を観てほしいです!そしてこのコラムも読まないで!

なぜなら、本作にある大事な仕掛けのネタが予告編に思いっきりぶち込まれています。映画の内容も原作の漫画と完全に一致する仕上がりなのでぜひノーーーータッチで!それを踏まえた上で書きなぐっていきますよ〜

 

『ミュージアム』

内容と解説

過激な描写と緊迫のストーリー展開で人気を博す巴亮介の人気サイコスリラー漫画を、これが初タッグとなる小栗旬主演×大友啓史監督により実写映画化。雨の日だけに起こる猟奇殺人事件を追う刑事の沢村久志。犯行現場に残された謎のメモや、見つけられることを前提としたかのような死体から、カエルのマスクを被った犯人像が浮かび上がる。通称・カエル男と呼ばれるようになった犯人を追い詰めていく沢村だったが、カエル男の仕組んだ残酷な罠にはまり、絶望的な状況に追い込まれてしまう。主人公・沢村役の小栗、沢村の妻を演じる尾野真千子はじめ、野村周平、大森南朋ら豪華キャストが共演。(映画.comより引用)

 

①はじめに 〜名作映画のエッセンス〜

 本作の概要を知って多くの人が連想する映画が『セブン』『SAW』です。この2本が好きな人は本作に興味を惹かれるんじゃないでしょうか。

 まず『セブン』 犯人が被害者を勝手に罪に当てはめて「私刑」で裁く。『セブン』はキリスト教の七つの罪に準えた連続殺人事件。『ミィージアム』ではドッグフードの刑やずっと美しくの刑、均等の愛の刑などに処されていく連続殺人です。その私刑の白羽の矢がラストで主人公に向けられていくという展開もそっくりです。雨がずっと降っているという雰囲気作りも近い。

 『SAW』は殺し方のレパートリーやラストで主人公が閉じ込められ、脱出に挑む密室サスペンスの展開になる点(犯人の目的が読めない点も)が類似しています。

 また『羊たちの沈黙』とも共通している場面がありました。サイコキラーのアジトにコレクションが並んでいる。犯人がそのアジトで自分だけの世界、価値観を構築し犯罪を練って練って実行に移していく。そこへ主人公刑事が突入するような展開です。

 本作『ミュージアム』はこういった作品のエッセンスがブレンドされている。その上で『ミュージアム』ならではのテーマが挿入されています。(これは原作の時点でそうです)

 今回は上記の作品との比較も交えながら書きなぐっていきます。

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②構成について 

 連続殺人のサスペンスと謳っていますが、実際の犯行の過程を見せるのは最初だけ。「母の痛みを知りましょうの刑」意外はすべて殺害の結果だけが描かれていきます。だから、思ってる以上に展開が早い。①で記した映画『セブン』のようにじっくりは見せません。あっという間。その連続殺人のターゲットが主人公刑事の小栗旬の奥さんだとわかり奥さんが拉致されてしまうところまでが前半。後半は小栗旬がさらわれた奥さんを追い求めながら妻との回想と家族への懺悔が織り交ざっていきます。わりかし本作の主題は後半のような気がします。

 なぜターゲットにされてるのかは序盤ですぐ明らかになるのでそこではなく「犯人は誰なのか」「犯人はどこにいるのか」といったミステリー要素と妻への回想と反省が後半の推進力であり、本作の主題となっています。

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③原作との違い 〜そことここはアレンジを!〜

 原作との大きな改変が2カ所ありました。1つはある人物設定の改編。もう1つはオチです。

 人物設定の改編によって犯人は妹に殺されます。身内でケジメをつける…うーーん。ここは原作通り生かしておいてほしかった!こういう映画ってサイコキラーの「支配力」が大事だと思ってます。牢獄に入れられても周りに大きな影響を与えたり、死んでも生き残った者がずーーーっと背後に感じるような存在感。要はそのサイコキラーに出会ってしまった時点でその人の人生が大きく変わり、永遠にその面影が残り続けると言いますか…。だから、最低限「やつは生きている」っていう恐怖だ大事だと思うんです。過去作品で言えば『ハロウィン』のブギーマンは不死身だし、名作漫画『モンスター』のヨハンだって重体のはずなのに最後は病院を抜け出して終わる。①であげた作品だってそうです。『SAW』だってジグソウの後継者が現れたりするし、『羊たちの沈黙』だってサイコキラーのレクターがいたから事件解決も出来たし、主人公はトラウマを払拭できたという矛盾を抱えた構図が構築されながらも最後は脱獄してしまいます。じゃあ、『セブン』はどうなんだと。ラスト犯人は○○になっちゃいますけど、それが結果的にラストの7番目の大きな犯行になる訳ですから完璧なんです。で、『ミュージアム』に関してはオチと犯人の仕掛けとは直接的に結びつかないんです。ある意味、犯人の残した「呪い」と解釈する事もできるんですけどこれたまたまなんですよね。個人的にこのオチの不気味さは大好きです!けど、おしいというか犯人の意図したもの感だしてるけど、そうじゃないから…うーんですね!

 逆に改編したほうがよいところがあるのに原作通りにやっていてなんだかな〜という箇所もありました。

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 例えばこの構図。主人公の後輩刑事にあたる野村周平。腕を縛られてビルの屋上で落とされるギリギリの感じで犯人が支えてるんですけど…どうしてこういう状態になったのかよくわからないし、この体勢になるのに1分もかかってないんです。しかも、この状態で台詞のやりとりをしてる。不自然ですよね。漫画だったらまだギリいけるんです。漫画って時間の進み方が人それぞれだからこの短時間でどうやって?とかって思わないんです。人それぞれ読むペースがあるから。でも映画って時間の進み方は観客全員同じじゃないですか。当たり前ですけど。だから、え?ってなっちゃうんですね。

 あとね、クライマックスで主人公が監禁されてそこですんごい仕掛けあるんですけど…いや、結末の前にそれバレるよ!!!っていうくらいブツを映してるんですよ。ブツっていうのはハンバーガーなんですけど、あんなに見せたら感づくよ?わ!奥さんと子供がハンバーガーの肉になっちゃったの!??って。観客に優しすぎる。結局、それはフェイクだったんですけど安心させるのも早い……。これ、漫画と同じタイミングなんですけど、ここは改編してほしかった。この後にもう1つ仕掛けがあって「奥さんと子供をハンバーガーにしたカエル男を銃撃ちまくりながら主人公が追いかけ回す。だけど、途中で犯人はカエル男の服装をしている奥さんと入れ替わる」つまり、主人公が自分の手で奥さんを撃ち殺してしまうという計画なんですね。それを主人公が見抜く場面が漫画じゃないと表現できない演出なんです。奥さんカエル男の背中が、家を出て行く奥さんの背中と重なって撃たないんです。これって映画じゃ難しいですよね。ここすごい感動的なんです。だから、奥さん生きてますよ〜のネタバレが早くても文句ない。けど、映画はそうじゃないんで……。改編するところとしない部分のメリハリを検討してほしかった部分です。

 

④キザな監督とキザな俳優 

 主人公を演じる小栗旬が本当にかっこいい。オレ主役だぜ〜感がハンパない。華ありますね。若くて無鉄砲な雰囲気は『セブン』のブラピをイメージしたんだと思うんですけど、すんげー簡単に言ってしまうと「キザ」なんです。ただ、このキザ感がこの映画と合わないんです。完全に浮いてしまっています。妻がターゲットにされた事を知ってオフィスでむちゃくちゃキレるんですけど、そのキレ方が派手すぎててなんかもう薬物中毒者にしか見えない。そもそも日本人ってこんなキレ方しないんですよね。こんな感情オープンにならない。すごい違和感。クライマックスでどん底に追いつめられての発狂は良かったんですけど、それまでがちょっとオーバーでした。で、実は本作の監督である大友啓史さんの演出がもともと「キザ」なんです。これ別に悪い意味じゃないんです。他作も観てみるとやけにカッチョええ演技の付け方が多い。これって映画の設定によってはミスマッチなんです。このキザが良く出てたのが大河ドラマの『龍馬伝』と『るろうに剣心』(特に2と3)です。熱い時代劇にすごいマッチしてる。監督がハリウッドで学んだ知恵ともともと持つ「キザ」という演出のクセが程よくマッチした。ぼくは大友監督の撮る時代劇が好きなんだな〜と思いました。

 キザな監督とキザな俳優。そして、現代を舞台としたサイコサスペンス。この組み合わせの相性がよくなかったんだと思います。

 

⑤画作り

 良いところもめっちゃありました。まずロケ地とセット。ロケ地に関しては殺人現場のセンスいいですよね。廃工場とか使われなくなった線路の上。セットに関しては警察の署内も最近あるあるのオフィス感を一切なくして古びたコンクリートの建物内。アナログ感というか、ノスタルジックな感じ。泥臭さが出てます。犯人のアジトとなっている屋敷もすんごい不気味です。あと、役者さんで言えばカエル男役のブッキーも最高でした。犯罪に興奮して発情してる感じというか快楽を得てる。最高ですね。映画としてもR指定がされてない事がおかしいくらいしっかりグロテスクな場面見せてましたし、邦画のサイコスリラーの中ではだいぶ上質だと思います。

 個人的な思いとしては、大友監督に製作委員会方式ではない自主映画に近いような低予算でいいから商業映画。もしくは、やはり時代劇!撮ってほしいです!最近は原作ものを任される監督になってきているので、ぜひそういうのが観たいな〜。

 

以上。

低いところから失礼しました。

 

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