新作映画『SCOOP!』 ネタバレあり感想文 〜働くこいつらに嫉妬する!娯楽作品の傑作誕生〜

 日本で娯楽映画は成立しにくい。と筆者は思ってるし、事実なんだとも思う。

 ド派手なアクション、爆発、サスペンス、カーチェイス……活劇を盛り上げる大切な要素だけど、邦画でこれらを立派に見せてる映画は本当に稀だし、主流ではない。ほとんどが娯楽映画の名産地であるハリウッドの真似事に見えてしまう。日本は「動」というより「静」の映画が多い。欧米と違って「I LOVE YOU」とストレートに感情をぶつける風習がない日本人にとっては「静」の中で激しく揺れる心や葛藤は描きやすいし、国民生にフィットしてる。だから「人を楽しませる」という手法を徹底的に極めているハリウッドと比べてしまえば、どうしても一歩劣ってしまう。

 伊丹十三という監督がいた。伊丹さんの『たんぽぽ』を観た時に感動した。ラーメン屋という設定の中に西部劇の要素を丸々ぶちこんで、日本ならではのエンタテイメントを確立していた。ハリウッドに対抗するのではなく、日本でしかできない日本の娯楽映画を成立させてた。

 そして、本作『SCOOP!』は日本の娯楽映画として傑作に仕上がっているのだから、筆者の熱は高い!!!

 

『SCOOP!』

あらすじと解説

福山雅治が「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督と初タッグを組んだ主演作。1985年に製作された原田眞人監督・脚本の映画「盗写 1/250秒」を原作に、芸能スキャンダルから社会事件まで様々なネタを追いかける写真週刊誌カメラマンや記者たちの姿を描く。数々の伝説的スクープをモノにしてきたカメラマンの都城静は、輝かしい業績も過去のものとなり、今は芸能スキャンダル専門の中年パパラッチとして、借金や酒にまみれた自堕落な生活を送っていた。そんなある時、ひょんなことから写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者・行川野火とコンビを組むことになり、日本中が注目する大事件に巻き込まれていく。福山扮する静の相棒となる組む新米記者・野火を二階堂ふみが演じ、吉田羊、滝藤賢一、リリー・フランキーら豪華キャストが共演する。

 

 日本の映画でこんなにもドキドキさせてくれること自体がもう幸せ!!!

 え?なんでドキドキするの?と。何がスリリングなの?と。そんな風に思いますよね。

 本作の主人公たちはパパラッチ。片手に持ったカメラが拳銃に対抗しうる「武器」となっています。球団のエース、アイドル、大物政、殺人犯……といったようにゴシップ写真を撮る「ターゲット」が毎回いて、それを福山雅治と二階堂ふみのバディが1つ1つクリアしていくんです。そのターゲットの難易度も上がっていく。危険なミッションをクリアするほど雑誌の売上数が伸びていく。このミッションを乗り切る過程がまぁ面白い。スパイ映画っぽかったりするんです。スーツを来てホテルに潜入したり、いろんな手を使って写真をすっぱ抜いていく。写真を激写するシーンは完全にスナイパーを彷彿とさせます。一瞬のスキを突く。そこを逃したらもう後がない…。この緊張感がたまらん、たまらん。写真には社会的抹殺に追い込む力がある。現代社会ではある意味、ピストルで撃たれるよりも脅威なんです。

 彼らにとってカメラは最大の武器。クライマックスで実際の銃を持った男とカメラを持った二階堂ふみが対峙する場面があるんですけど、ふみちゃんは一歩も引かない。写真の影響力の大きさを確信したふみちゃんにはわかってるんです。カメラは武器なんだと。

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 撮る側と撮られる側。そして、ファインダーを覗いて被写体を追っていたはずが、ふとした拍子に被写体に見られる。っわ!見られた!有利に立っていたはずが、見られることによって一気に形勢逆転されるという映画ならではの緊迫感・・・。たまらんですよ。これは。

 冗談抜きで「手に汗握る娯楽作品」になっているわけなのです!

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 大根仁監督によるストーリーテリングも超ポップで見やすい。観客が気持ち良くノリノリで観れる。『モテキ』では主人公の心情をミュージックビデオ的な演出で描き、『バクマン』では脳内で起こる創作の戦いという本来は伝わりづらい描写ををCGとプロジェクションマッピングを駆使し表現していました。今回も雑誌の部数売り上げが伸びる様子を地味ながらも上手く描いてます。あそこ凄い気持ち良く、高まる。

 題材が題材なだけに「ジャーナリズム」がどうのとか「反体制」がとか「言論の自由」がとか小難しい話になりかけますが、二階堂ふみちゃんに「そんなのわかんねーって言ってるじゃないっすか!」とぶった切らせることで、省いてる。笑 そういうディベートを一切見せない。娯楽作品ですから!!活劇なんです!アクションなんです!また、福山雅治が史上1のダーティーな役なんですが、カッコつきそうになった所ですべて裏切ってくる。バットを持ってふみちゃんを助けに行く場面もそうですし、ビールの泡が吹いちゃったり。かっこいいんですけど、ちゃんとダサい。そういったところを含めて、語り口がすごい軽妙なんです!無駄がない。観客を楽しませることに徹底している。

 

 「リリー・フランキー」とキャストにクレジットされてるだけで、「またかよ…」拒否反応が出ちゃうくらいリリフラさんは映画に出演しまくってます。ここで出しときゃなんとかなると思われてるのか、めっちゃ出てますよね。でも、本作のリリフラさん、めちゃんこいい!筆者の中でずっと観たかったリリフラさんがそこにいました。これこれこれ!!!すんごい軽い感じでテキトーに見えるけど、何をしでかすかわからない。すんげー怖いんですよ。これなんですよ!これ!ネタバレになりますが、ラストでピストル持って徘徊するシーン。クソ怖いですよ。「殺人」という行為に何の重みもないんです。

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 ちなみに「濡場が長い」という指摘を見たけど、当たり前だろ!!!!大根仁監督だぞ!!!笑

 まぁ、冷静に見てもやりちんである福山雅治の愛を描くにはあの尺は必要だったと思っています。まぁ、そもそもあそこでヤっちゃうのかぁ・・・とも思いましたが、ラストの盛り上がりを考えると必要かなと……

 

 もう最近、涙腺がぶっ壊れ始めたのか本作観て何度か泣きそうになりました。泣く映画じゃないんですけど。

 脱サラ芸人の筆者としては「サラリーマン」に嫉妬しました。もし、あのまま会社をやめないで働いていたら…って。それはそれで楽しそうだって。社畜になって働く。ボロボロになるまで働く。うわぁ、羨ましいなと。そういう意味ではもう観たくないですね。

 

 低いところから失礼しました。

 

新作映画『少女』ネタバレ無し感想文 〜武器である映画を封印されて…〜

湊かなえ!

湊かなえ!

湊かなえ!

 

 この名前のズドーーーーンって感じ。この作家が持つネームバリューはととてつもなくデッケーっすよね。みんな大好きでしょ?小説家としてもそうだろうし、映像化したことによってより一層この名前が世に広まってる。決定的なのは中島哲也監督『告白』 その他にもドラマ化もされまくりで。筆者は湊かなえ作品を読んだことないんだけど、映画で言えば『白ゆき姫殺人事件』は好きな映画です。あれはもう井上真央ちゃんのある意味アイドル映画として最高で、役がハマってたし何度も笑いました。菜々緒が初出演とかいう宣伝文句はどうでもいい。

 邦画って一時期、『世界の中心で愛を叫ぶ』があったせいか余命モノや感動モノが大量生産されてた。今でもあるけど、そういう泣ける映画が評論家はどうあれ世間的にも良いとされてた風潮があったと思うんです。けど『告白』や翌年に公開された園子温監督『冷たい熱帯魚』が興行的に大成功を収めたことで、そういうショッキングで残忍な映画も面白いと観客は感じるんだと日本映画は気付かされたと。(感動モノの反動でもあるのかも)そんな気がしてます。

 そういうこともあり「湊かなえ原作」と聞くと観客の気持ちは煽られる。今の日本人には「湊かなえ原作」はたまらん宣伝文句なんじゃないですかね?独特の後味の悪さを求めて観客は劇場に足を運ぶ。ラストは気持ちよくない。けど、そのストレスを求める。そういったかまえで行くと本作『少女』は……あれ???って感じに陥ります。

 

『少女』

 

 「人が死ぬところを見てみたい」というタブーな願望を女子高生が持つ…うん、いかにも暗くて怪しい。湊かなえっぽい。しかも、この「死への興味、好奇心」って誰もが一瞬は抱えるけど、周りには言えないタブーに属しますよね。倫理的にはダメだけど、ちょっと気になる…という要素を突いてきてる。題材は超イイじゃないっすか!!!そんな気持ちを抱えた女子高生は何をしでかすのかって気になる!そそる!そそる!!だけど、筆者が上記でお茶濁す書き方をして理由はシンプルです。

 

観ずらい。

 

 いや、シンプルすぎて逆にわかんないっすね。どういうことなのかと…

 当初は「人が死ぬところを見てみたい」っていうゴールが設定されてます。だから、そこに向かって一直線に進むべきなのに、最終的に少女たちが何がしたいのかが全くわからなくなります。途中で目的が変わり心情が変化してるんでしょうけど、今現在、彼女らがどう思っててどう変化したのかが全く読めない。もちろん監督のストーリーテリングの仕方の問題もあると思うんですけど、メインの2人にはこういうわかりにくい役は重荷なんじゃないか!?マッチしてないです。こういう役ってすんげーむずいじゃないですか。表情の絶妙な変化、仕草で心理を語っていかなきゃいけない。この手の作品はそういう表現が出来て、相手に伝わった上で裏切りもしなきゃいけなくなる。「怒ってるように見えたけど、実は喜んでた」とか「楽しんでるように見えたけど、実はあざ笑ってた」とか。人間の裏表を出さないと失敗すると思うんです。だけど、この2人は裏なのか表なのかもわからない。読み取りづらいんです。2人が悪いんじゃなくて、そういう事ができるタイプの役者さんではないと思います。

 

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 2人とも自然な笑顔が超素敵なタイプなのに完全にそれを封印され、ラストに笑顔爆発するんだけど、それまでが真顔のオンパレードのため不自然にしか映りません。

 兎にも角にも、観ているとこの話がいったいどこへ向かうのかが全く読めない。それは展開が読めなくて面白いんじゃなくて、2人が何をどのように感じてるのかがよくわからないため観客は置いてかれてしまうんです。本作はそういう観客を混乱させる点が非常に多いです。今のは役者の演技の付け方についてですが、配役のバランスもちょっと……。一番は稲垣吾郎。出てきただけでやっぱり何かあるって勘ぐっちゃうんです。そういう怪しい雰囲気もってるし、近年の起用のされ方も多い。今回は完全に良い人で、最初疑ってる分なんだか肩透かし。もっと吾郎ちゃんをあえて疑わせる場面が多くて、最後良い人でした〜!みたいなあの『ホーム・アローン』のスコップおじさんや鳩おばさんみたいな捌き方ならいいんですけど、そういう描写もない。

 配役という意味では老人ホームに勤める恰幅の良いおばちゃんもあまりにもコミカルすぎる。この作品のトーンに明らかに合ってない。浮いてる。コミカルという意味で言えば、その老人ホームで三月ちゃんの目の前に入れ歯が落ちてきたり、バッサーが途中でコンドームをブニュってして「あんなおじさんとなんてやっぱ無理ー!!!」みたいなラブコメみたいなトーンで演技したりするんですけど、すんげーノイズ。笑っていいの?って。ホラーとコメディは紙一重ですけど、そういうんじゃなく本題に関係ない部分でそういうコメディタッチが入ってくるんで、すんげー記号的なんです。

 

 結論を言うと、映画としてすんげー観ずらい事になっちゃってる。画だけ観るといっちょまえで面白そうだし、実際見ててもこのトーンは良い雰囲気なんですけど、一本の映画として観ると訳がわからん。そんな映画でした。

 

 低いところから失礼しました。

 

 

新作映画『ハドソン川の奇跡』感想文 〜愚行だと思われていた偉人の行動 サリー!疑ってごめん!〜

低いところから失礼します。ジャガモンド斉藤正伸です。

 

『ハドソン川の奇跡』(原題『Sully』)

 

 

 現役映画監督の中で最高年齢を誇るクリント・イーストウッド大先生!ちなみに我が国が誇る『男はつらいよ』の山田洋次大先生は85歳。イーストウッド大先生は1つ上の86歳でございます。そんな大先生が2009年にニューヨークで起きた旅客機着水事故を映画化なされました。

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 そんなありがたき映画を筆者は拝むような気持ちで某映画館のレイトショーへ。しかもIMAXシアター。本作はIMAXカメラで撮影したと聞いていたので、そんな迫力も堪能しようと半券片手にスキップしながら劇場へ。

 90分代という見やすい尺で大先生はどんなお仕事をなされたのかワクワクしながら、座席につきました。

 長すぎる予告編にいつもは飽きてしまいますが、大先生の前戯だと思えば何のその。へっちゃらでございます。予告編を観ながら、大先生の今までの作品の回想に耽っていました。

 そして、大きな画面にこんな表記が……

 

「3Dメガネをおかけください」

 

 は!????3D?もらってないよ!てか、そもそも3D作品じゃないよね……?

 

 すると、紫基調のIMAXのロゴが出現し、ジャレットレト版ジョーカーの高笑いが…「ハーッハハッハッハハ…ハッハ…ハ…ハ……」ウィル・スミス、エロいマーゴット・ロビーがどーんどーん!そして、タイトルロゴドーーーーン!!!『スーサイド・スクワッド』

 

 劇場、間違えたーーーーー!!!!

 と思いきや周りの観客も騒然とし始め、画面がプツリと真っ暗に。完全なる劇場側のミスで誤放映が起きたのです。スタッフさんがバタバタ駆け回り20分後にようやく役員の方が現れ謝罪。今から本編を放映し、終了予定は12時30分。もし終電など時間が厳しい方は名乗り出てください。ご返金いたしますとのこと。シーーーンと静まりかえる劇場内。まるで「ここから命の保証はない。帰りたいやつは帰れ」という鬼軍曹を前にした兵士達のようでした。そして筆者は………脱落!!!ごめんなさい!!!大先生!!!だって終電が無いんだもの!!!翌朝、早かったんだもの!!!

 その日以降、なかなか時間の作れなかった筆者はベッドまで共にしたのにやらしてくれない女と終電でバイバイしたような気持ちになりました。どんな気持ちかって?ムラムラが収まらなかったんだよ!!!

 そんなギンギン状態でようやく時間を作りクリント・イーストウッド大先生の『ハドソン川の奇跡』を観てまいりました!

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 結論からいうけど、良いに決まってるんだから行こうよ!!!

※ムラムラしててやっと抱けたからではありません。いたって冷静。

 

 主人公はトム・ハンクス演じるサリー機長。40年の勤務を誇るベテランのパイロット。妻子に恵まれ、酒・タバコ・ギャッブル・ドラッグとは一切無縁。ひたすら真面目に安全運転を成し遂げてきました。ある日、ニューヨークを飛び立ったサリー機長の飛行機エンジンに鳥の大群が激突。両エンジンが機能停止し、グライダー状態。つまり、もう落下していくことしかできない飛行機と化しました。管制塔からは別の空港へ降りろとの指示が。しかし、ベテラン・サリーは自身のカンによりハドソン川へ着水!川へ落ちれば生命の保証はされないと言われていましたが、なんと155名全員が無事故生還!英雄視されているのもつかの間……やらしい大人達が疑いだします。

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 みてよ!このハゲの顔〜!嫌な顔〜!やらしいわ〜!

 ハドソン川着水は成功したから良かったものの、それは大きな賭けでむしろ乗客の命を危険にさらしたんじゃないの??っていう。コピー通り「155人の命を救い、容疑者になった男」の話なんです。ハゲ達には立場と言い分があってですね…着水したってことは旅客機を1機無くしたってことですから。損害も大きいわけだし、保険会社としてもしっかりその辺をハッキリしてほしいと。また、コンピューター上の計算やシュミレーションだと、空港に着陸できたんだと。そう言ってるわけですよ。「そんなわけない!」とサリーと副機長のアーロン・エッカートは反論するんですけど、本編内の着水直前シーンを見てるとこっちは飛行機に関してはもちろん素人ですから、サリーの判断がよくわからないんです。何を見てハドソン川着水を決断したのか?って。むしろ副機長もめっちゃテンパっててマニュアル本とか見だすから頼れるのはサリーだけ。

 さらに、映画を観てるとサリーがすげージジイなんです。事故後には飛行機が墜落する幻覚や夢をよく見てる。そんなのを目にすると「あれ?サリー…大丈夫なの?」って。本当は間違ってたんじゃないかって気になってくる。ハゲたちが正しいんじゃないかって…。

 「結局、真相はわからない」みたいな終り方されて、サリー悪い説も残ったまま終局してしまったらどうしよう…。それこそまたムラムラしてしまうんじゃないか!?って。

 ところがどっこい。

 クライマックスで決定的にサリーの正しさを証明する場面があるんです!そのシーンの緊迫感と気持ちよさたるや……!!それと同時に…サリー!ごめん!疑って、本当にごめん!ってなります。テクノロジーに過信しているぼくらの気持ちをサリー機長がぶち壊してくれるんです。そういう意味でサリーはゴジラですよ。白髪のゴジラです。

 観客含めて愚行だと疑っていた偉人の行動の正しさが証明される。これって最高ですよね。てか、歴史はこんなことの繰り返しです。

 

 個人的には中盤で「ニューヨークでいいニュースっていうのは最近じゃ珍しい。特に飛行機関連ではね…」っていうセリフがあってグッときました。アメリカ国民の生の声感ですよね。

 無事に着水できるっていう結末はわかってるのに、着水直前の飛行機内の緊迫感は凄まじいです。なんでこんなに圧倒されるのか不思議なくらい。その時のトム・ハンクスの顔が良いんです。このシーンなぜかボロボロ涙が出ました。こんなに必死に命を救ったのに後には決して理解してくれない部外者から疑われるんだと。

 90分という短い尺ですが間違いなしの良作。ぜひ。

 

 低いところから失礼しました。