読んだら必ず観たくなる

低いところから失礼します。ジャガモンド斉藤正伸です。

 

『ジャングル・ブック』

解説とあらすじ

ルドヤード・キプリングの同名小説を原作とする名作ディズニーアニメーションを、「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブロー監督が実写映画化。ジャングル奥地に取り残された人間の赤ん坊モーグリは、黒豹のバギーラに助けられる。母オオカミのラクシャのもとに預けられたモーグリは、ラクシャから惜しみない愛情を受け、幸せな毎日を過ごしていた。そんなある日、人間に対して激しい復讐心を抱くトラのシア・カーンがジャングルに戻ってくる。ハリウッド屈指の映像制作チームが最先端の映像技術を駆使し、主人公モーグリ以外の動物や背景など全てをリアルなCGで表現。モーグリ役にはオーディションで2000人の中から選ばれた12歳の新人ニール・セディを起用し、ベン・キングズレー、ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、クリストファー・ウォーケンら豪華キャストが個性豊かな動物たちの声を演じる。(映画.comより引用)

 

さすがのジョン・ファブロー

 アニメでも実写でも傑作、大ヒットが続きモンスターズ・インク化しているディズニー。もはやこの暴走は誰にも止められません。そんなディズニーが新たに世に送り出した『ジャングル・ブック』 筆者は勉強不足で原作未読。アニメも記憶がおぼろげ…同じ時期に公開された『ターザン リボーン』(国の王子となった元ターザンが愛する人を救うためにまたターザンになる的な話)とごっちゃになるくらいの認識でした。

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 同じ時期すぎて、ひょっとしたら『ジャングル・ブック』の続編が『ターザン リボーン』!?二部作なのか!!って。

 ジャングルを離れ、成人した主人公がジャングルに再び戻り、戦う!!そんな熱いプロジェクトなのか!?この子がこうなる!??

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 こういう余計な妄想が膨らんでしまったせいもあり、なかなか劇場に足を運べませんでしたがこの度やっと……!観てきました。

※もちろんこの2作品は全く関係ありません。

 

 監督は『アイアンマン』『アイアンマン2』『カウボーイ&エイリアン』のジョン・ファブロー。

 舞台はジャングルって事で場面は変わらずなんだか画が退屈そうって思ってましたが、さすがのジョン・ファブロー。まったく飽きない。TV-CMで「少年以外全部CG!」と宣伝してましたが、その環境を存分に活かし、実写では撮れない角度からのショットをおさえて編集もスピーディーだし、音楽のタイミングもジャストで気持ちよい。基本、主人公のモーグリが動物に追われまくるアクションシーンなんですけどちゃんとマジで怖い。遺跡でデケェ猿から追われる場面とかけっこうビックリしちゃいました。

 ジョン・ファブローって映画内に登場するアイテムで観客をちゃんとワクワクさせてくれるんです。『アイアンマン』なんて代表的です。スーツを作ったり、試しにスーツを使うところめちゃ楽しい。『カウボーイ&エイリアン』だって題材馬鹿らしいですけど、ダニエル・クレイグが左腕にはめてる武器の格好良さは西部劇という設定には異質で最高。本作もそういうワクワクシーンのてんこ盛りでした。

 

実際の存在するものをCG化した「アリものCG」

 さっき記した通り「少年以外全部CG!」イェーイ!みたいな映画です。でも、もうCG飽和時代に突入しているから、皮肉にも何をやられてもあんまりビックリしないというのが現状。

 映画史において「実在感のある」CGを世に放ち、人々を驚かさせたのが1993年『ジュラシック・パーク』です。

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 たしかにこれ以前にもCGが使われた映像はありましたが、「まるでそこにそれが本当にいるかのような」見せ方をしたのは技術の大進歩でした。これ以降、CGは映画で多様されていきます。ただ、割と今まではロボット、エイリアン…といったような存在しないものをCGで描くことが多かった。そういうベクトルで進化していきました。『アバター』を代表とするようなモーション・ピクチャーという新技術も登場する中で、本作『ジャングル・ブック』は「実際に存在するものを本物のように見せるCG」という挑戦の集大成だと思います。

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 本作で登場する動物に特別な種は出てきません。われわれがテレビや動物園で見れる動物ばかりです。そういったものをCG化する方が難しい。正解がわかってる分、おかしいところがはっきり浮かび上がってしまうからです。そういった点からして本作はマジすげぇです。一部は本物なんじゃないかって思うんですけど、全部CG。表情や仕草、光の当たり方…すべてが計算し尽くされている。これが今までと違う「実際に存在するもの」をCG化した「アリものCG」なのです!(「アリものCG」という言葉は筆者が勝手に考えてます)

 で、ここからが大事なんですけど、これって単なる「動物の再現」じゃない。ちゃんと演出されてる。感情、意志をしっかり感じ取れることができるんです。このリアリティラインぎりぎりのとこを攻めてる。演出をつけすぎると嘘っぽくなる。あくまで、動物というものをベースにしてそこから逸脱はしていない。筆者が特に感じたのは「目」です。目の演技が素晴らしい。喜ぶっていう動作はジェスチャーつけちゃえばいんですけど、難しいのは怒哀楽。その絶妙な心の揺れ方がよく出ている。目を見るだけて悲しいのか、心配してるのか、怒ってるのかがわかる。こういう秀逸な演出によってちゃんと感情移入できるんです。

 

多種多様って楽しい〜!万歳!

 じゃあ、物語としてはどうなのか。ついこのあいだの『ズートピア』もそうでしたけど「みんな違うって楽しい〜!万歳〜!」っていう多種多様性が根本のテーマ。ディズニーって基本そういう物語が多いです。多種多様な世界で、違うもの同士が個性を活かして共生していく物語。

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 ジャングルですから個性豊かないろんな動物がいるんです。それでいいじゃん!違いがあるって楽しいじゃん!っていう。

 雨が降らなくなり日照りが強くなった時に池が干からび「平和の岩」が顔を出します。この岩が出た時だけ、弱肉強食による食物連鎖の世界は解かれ動物達は休戦状態になる。肉食動物も草食動物も一緒になって池の水分を共有する。多種多様性の象徴的な場面です。

 そんなジャングルに放り込まれた異端な存在である人間の子供・モーグリー。かつて人間へ傷を負わされ復習に燃えるスゲー強いトラが出てくるんですけど、そのトラがモーグリーを殺そうとする。「人間は敵だ!」と自分たちを滅ぼす存在なんだと。モーグリーを拾ったクロヒョウと育ての親である狼達はトラからモーグリーを守ろうとする。それを追うトラ。シンプルですよね。追う側と追われる側の攻防戦。マッドマックスみたい。

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 サラリと伏線が張られていて気持ち良く回収されるし、さっき書いた通りアクションシーンもスリリングで最高。弱肉強食のジャングルとはいえ、実際に狩りをして肉を食べるといったような生々しいシーンはどこにもなく、老若男女どの層でも楽しめるエンタテイメントに仕上がっています。

 

 

抑圧された人間としての知恵、文明の利器 〜なぜトラを殺した!??〜

 主人公のモーグリーは人間ですから、それなりの知恵がある。文明の利器だって持ちいることができる。面白いのは、この文明の利器はジャングルでは禁止されているという設定。モーグリーの師匠的な役割を担う黒豹が「狼らしくしなさい」と叱るのです。木製のバケツや木のツタを使ったロープ、石のナイフ、木製のクレーン…モーグリーの人間らしい知恵によりあらゆる道具が登場しますが、そういった力は抑圧されている。筆者的にこの設定がすごく面白いなと感じました。狼の子としてジャングルで生きたがっているのに、人間としての知恵が湧いてしまう。その知恵は抑圧されているわけですが、モーグリーは使いたがる。これって危なっかしい。動物たちが人間たちを恐れる象徴として火(動物たちは赤い花と呼んでいる)も登場します。触れたものをすべて焼き払ってしまう。火って文明の利器の出発点でもありますよね。皆が大事に大事に守ろうとしているモーグリーはまだちゃんとした人間で狼になりきれていない。むしろ、人間らしいところが押さえつけられていてなんだか窮屈そうなんです。でも、その人間としての知恵が動物たちを傷つける可能性を内包しているっていうのが皮肉なところなんです。複雑な状況なんです。

 だからね、モーグリーを殺したがるトラの主張ってまともなんですよ!モーグリーを残しておいたらたしかに危ないんです。トラ以外からもそういう主張が出たっておかしくない。だから、本作ではトラって別に悪じゃない。まともな意見なんです。けど、このトラは最後モーグリーによって殺されてしまう。主人公モーグリーは人間の世界には帰らずジャングルの一員としてまた新たに人生をスタートするところで本作は幕を下ろします。

 さて。先述した通りディズニーが得意とする「多種多様性」が本作のテーマだとするならば、モーグリーがジャングルに残るという結末はとんでもなく振り切ったスーパーポジティブな解答だと筆者は考えます。動物たちの脅威になりかねない存在モーグリーを全動物が容認し、共生するという道。ディズニーらしいと言えばそうなんですが、とんでもなく前向きです。これが悪いと言っているわけではないんです。でもね……

 

え?トラは?

 

 なんで殺されたんでしょう。みんなと違う意見を持っている人は徹底的に排除するということでしょうか。

 もしトラが、ジャングル征服を狙い手段を選ばない悪の存在という設定なら死ぬという結末はまだギリわかるんですけど。あのトラは復讐にとらわれためっちゃ哀れなトラなわけです。それを結局、殺してしまうって……多種多様性は尊重するのに、思考が合わなければ排除してしまうジャングルなんですよ!!めっちゃ怖くないですか?

 このあと、このトラと同じ考えを発想する動物って絶対いますよ。種族だけでなく、ジャングルの脅威になりかねない人間がいるわけですから。けど、たとえ他の動物がその考えを浮かべても声にはなりません。トラのように殺されるというイメージが焼き付いているから。トラは公開処刑だった。

 結果的にやむをえずトラが死んだっていう展開ならいいんですけど、モーグリーはじめ動物たちはみな、トラを殺すつもりで喧嘩してますよね。終盤は、なんだかイジメに見えてきました。

 

 なんなんでしょうね。こういうところがちょっと気持ち悪いし、怖いんです。またジブリの例えになってしまいますが、『もののけ姫』はもっといいアンサー出してましたよね。それぞれの場所で共に生きるっていう。本作の場合は、全く交わるべきじゃないモーグリーをジャングルに残し、マイノリティーな考えを持ったトラを殺すっていう…。

 だから、エンドロールとかめっちゃかわいいんですけど、結末がなんだか恐ろしくてそれどころじゃなかった。明るく作られてるのが、逆に怖い。ディズニー作品っておとぎ話や童話な次元に到達してると思うんです。子供にとって人生の教訓を学ぶ教育的な要素が大きい。だから、その辺きちんとやって欲しいんですね。

 

低いところから失礼しました。

 

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